緊急事態宣言の延長がほぼ確定路線となった2020年5月。
「元通りに戻ることは難しい」という安倍首相の言葉の向こうから、飲食店をはじめとした自営業の方々の悲鳴が聞こえてくるようだ。
5月初旬の時点では、倒産情報よりもコロナの恐怖を煽る方向でテレビ番組が組み立てられているため、世論は「コロナはなんとしても封じ込めるべし」に向かいやすい。
また「封じ込めこそが最大の経済対策」という意見もある。
しかしながら、どんなに頑張ったとしても、「補償なき自粛要請」に飲食店が耐え続けることは困難で、5月に限界を迎える店舗も多数あるように感じている。
そんな厳しい状況の中、一人で大笑いしているのが
「自粛を無視して経営する飲食店」
である。
こんなアホ共にウイルスばら撒かれたらたまんねぇよ https://t.co/q76jShr2Kc
— H (@entp_h) May 2, 2020
「自粛無視」は悪魔の囁きで、他の飲食店が完全に休業している中で自分だけ抜け駆けして営業すると、客が殺到して大儲けすることができる。
自粛に疲れて我慢の限界が来た国民が大勢訪れることだろう。
なにせ他の店はやっていないのだ。
やっている店に行きたくなるものである。
こんなのはまさに「正直者がバカを見る世界」だ。
これほどバカげたことはない。
国の「要請」に従い、苦しい中で雇用を守り、営業を自粛して。
ロブションのテイクアウト¥83,000(税込/4名様分)
— PuANDA (@shoichirosm) April 27, 2020
ごめん。全然そそられない。 pic.twitter.com/y8fuYucSXU
慣れないテイクアウトに踏み切り、「テイクアウトだと全然美味しそうに見えない」などとディスられながらかろうじて生きながらえている飲食店を横目に、自粛完全無視で営業しているいわゆる“無敵の人”が大笑いする。
こんな理不尽なことがあるか。
僕が飲食店経営者だったら、間違いなく「やってられない」と自粛を解くことだろう。
コロナ自粛で遂に自殺者が出てしまったね。緊急事態宣言で同様の事例がどんどん出てくることが恐ろしいよ。コロナではほとんど死なない働き盛りの年代が亡くなるのは本当に辛いよ。
— 説教おじさん (@partyhike) May 2, 2020
聖火ランナーのとんかつ店主、火災で死亡 生前は延期や新型コロナ影響を悲観 - 毎日新聞 https://t.co/p7LeIERQLN
日本に大勢いる自粛警察だって実態はただの小市民であって、法的な後ろ盾があって自粛を強要しているわけではない。
なので、反社に近い位置にいる輩にとっては自粛警察の声など小鳥のさえずりに過ぎず、自粛警察が騒げば騒ぐほど、
「このご時世でも営業している店」
の認知が高まり、さらに店に人が来るという謎の好循環を生み出してしまう。
じゃあ休業しない輩が悪なのか、と言われるとそれもまた難しい。
僕は法律に詳しいわけではないので細かい部分に間違いはあるかもしれないが、政府が打ち出しているのはあくまでも自粛の「要請」だったはずだ。
神奈川県知事がパチンコ店に「休業の指示を出した」とニュースでやっていたが、そういう強権をありとあらゆる3密業種に適用するためには、警察を動かせるようにしなければいけないようにも思える。
というのも、要請や指示を無視できるのであれば、無視した店がものすごく得することになるからだ。
背に腹は代えられない経営者が次々と要請を無視するようになるかもしれない。
歌舞伎町ではこっそりと看板を外して営業している夜の店もあるという。
知り合いの情報通から聞いたんですが夜のお店は休業の補助金もらって閉めた後に、常連をLINEで呼んで看板外してこっそり営業してるところがかなりあるらしいです。 https://t.co/SUTRrFWpsj
— Kazuki Fujisawa (@kazu_fujisawa) April 30, 2020
真面目に休業している人たちがバカを見て、抜け駆けする人間が得をする。
公平な競争環境で輩の店が繁盛するのであれば何の問題もないが、今の状況で輩に一人勝ちされたら本当に自粛などバカバカしくてやってられないと思ってしまうのではないだろうか。
シーシャと焼肉朋ちゃん六本木本店は、コロナウイルス、非常事態宣言関係なく、元気にバリバリ営業中‼️みんな焼肉かシーシャを楽しみにきてね✌️
— TOMORO (@TOMORO_KING6666) May 1, 2020
このコロナのタイミングでも毎日満卓‼️感謝申し上げます😊
コロナウイルス関係なし🤣むしろ朋ちゃんがコロナバブルを巻き起こしてます笑#焼肉朋ちゃん pic.twitter.com/JcLaS9wqlx
おとなしくて従順な国民性に甘えた「自粛要請」で誤魔化し続けるのは限界があるように感じる。
「5月6日」を節目と考えていた人はたくさんいるはずで、その先をどうするかは政府の舵取りが極めて重要だ。
今のままでは「自粛無視」が経営者にとって合理的な戦略となるため、舵取りを誤るとダラダラと正直者が損をする世界が続いてしまう。
それに「封じ込め戦略」が国家にとって最適な戦略だったとしても、国民はそんなマクロの世界を生きてない。
目の前の現実を生きている。
ケツに火がついた経営者に「国家の最適な運営のために死んでくれ」などと言っても、「知るかボケェ」と反論されるのは当然のことだろう。
こういうときは政治が正しい道筋を示し、適切な法を定め、休業を強要するならしっかりと補償して、強いリーダーシップを取らねばならない。
今が本当の日本の正念場だと思う。
特別措置法が規定する休業要請とは
2020年5月3日の日経新聞に休業要請についての解説があった。
改正新型インフルエンザ対策特別措置法が規定する休業要請は2種類ある。
1つは特措法24条に基づき協力を呼びかける緩やかな措置。
もう1つは特措法45条に基づき休業の要請に応じない事業者の店名を公表して、より強く要請したり、行政処分に当たる休業指示を出したりするもの。
要請に応じなかったり指示に従わなかったりした場合でも罰則はない。
休業しないパチンコ屋の店名を公表したのは「特措法45条」に基づいた措置といえるだろう。
しかしながら、パチンコ屋であれば実質違法のグレーゾーン業界にいるため「店名公表」などの嫌がらせ的な要求が効きそうだが、普通の飲食店にこのような「罰則を伴わない店名公表攻撃」が効くのだろうか?
休業していない店を全て把握するのも難しくなるだろうし、そこまでする意味があるかもわからない。
酒が足りねぇぞ。先にお客様が潰れた。 pic.twitter.com/kNenek9dRz
— ポムポムななちゃん🐶🍮 (@E_77chan) May 2, 2020
実際には“要請”を物ともしない「開き直り戦略」が極めて有効に働くため、(何度もこの記事で述べているように)罰則を伴わない要請や指示だけでは限界があるように思える。