孫正義に「無責任だ」というNHK「マネー・ワールド」の論調に違和感



孫正義さんに対して辛辣な反論を投げかけた番組がツイッターで話題になっていた。


ツイッターの動画はトリミングされているので、全体の議論はわからない。

動画の始めの方で、孫正義さんが以下のように発言している。

「常に進化していく世の中を哀しいと思うか、楽しいと思うか、チャンス到来と思うかで、結果は全然違うんだろうと思う」

「それは一人の人間にとってもそうだし、会社にとってもそうだし、大きく言えば国家にとってもそうだろうと」

それに対して、爆笑問題の太田光さんが

「それは成功者の弁ですよね?」

「そこまで考えられる人がどれだけいるかって話なんですよ」

と反論。

本当に「変化をチャンス」と考えられる人は少ないのだろうか?未来にチャンスはないのだろうか?


変化があるからこそ世の中は面白い。

いま成功している人が凋落して、新しい成功者が生まれる可能性だってある。


変化はむしろ、弱者にとってチャンスではないだろうか。


次に発言したのが新井紀子さん。

「資本主義の中でメリットを感じているのはお金が積み上がっていく資本家なわけです」

「孫さんは資本家なわけで、その資本家が実際に仕事を奪われる人に対して、『それは気持ちの持ちようだ』とか『もっと気持ちを明るく持て』いうのは無責任だと思う」


この発言について、本人はとても誇らしく思っている模様だ。



動画ツイートのリプ欄にも「よく言った!」と賞賛が並んでいるが、少なくとも僕は、このツイッターの動画の新井紀子さんの発言が正しいとは思わなかった。


僕は資本家ではない。

年収の低い、貧乏な労働者である。


いわゆる弱者的な立場にいる人間だ。

それでも資本家を責めて「無責任だ」なんて口が裂けても言えない。


資本家と労働者では背負っている責任が全然違うからだ。


資本家は株主に対して会社の成長を約束し、従業員の雇用を守り、世の中の変化の影響をモロに受けて、失敗したら一文無しになる可能性だってある。

自分の身を大きなリスクの上に置いて、それで成功した人が大きな富を得ているのだ。


風邪で会社を休んでも給料が入ってくる僕とは、背負っている責任の重みが全然違う。


資本家にお金が集まるのは、資本家が大きなリスクを取っているからなのだ。


新井紀子さんは

「夢を持って自力で頑張れっていうならまずは金をよこせ」

とも発言している。


世の中には、魅力的な夢を語る起業家を応援し、資本金を出すベンチャーキャピタリストがいる。

孫正義が才能を見込んだアリババに20億円投資したのが2000年で、その14年後にリターンが4000倍近くに膨れ上がったという話は有名な逸話だろう。


先日歯医者に行ったのだが、僕が負担した治療費はごく一部であった。

安く虫歯を治すことができたのだ。


安くできた分の治療費はどこから出ているかというと、税金からである。

日本は累進課税制度が取られていて、成功した資本家は莫大な税金を取られてしまう。

彼らが税金をたくさん支払ってくれるから、僕のような税金をあまり支払っていない人間でも安く医療を受けることができるのだ。

成功した資本家には、「弱者のためにたくさんお金を払ってくれてありがとう」と言いたい。


失敗しても自分の責任で、従業員の生活を守り、明日がどうなるかわからない中で会社の舵を取って、ようやく入ってきたお金は税金でガッツリ持っていかれて。

そんな資本家に対して「無責任」などと言えるだろうか?


新井紀子さんは太陽光発電についても言及している。


たしかに孫正義さんの太陽光発電に対する熱が冷めているのは気になるが、「儲からない事業を辞めて、儲かる方にコミットする」のは、株主や従業員に対する「経営者の責任」ではないだろうか。

また、誰かが「これいいよ」と言っていたのを鵜呑みにして事業を始めて、失敗したら「責任を取れ」って言うのもおかしい。

子供じゃないんだし、何が正しいかは自分で考えて判断しないと。

「せんせいが正しいと言ってたからやってみたら、しっぱいしました」

なんて言い訳は学校でしか通用しない。

大人になったら何が正しいかは自分で考えて、自分で責任を取らなければいけない。

いつまでも甘えているわけにはいかないのだ。


ツイッターのリプ欄にある「日本の携帯電話の料金が高い件」に関しては、正直物申したいこともあるが、「変化を楽しむ思考を持て」という孫さんの発言の是非とは切り離して考えなければならない。


「常に進化していく世の中を哀しいと思うか、楽しいと思うか、チャンス到来と思うかで、結果は全然違うんだろうと思う」

僕は孫さんのこの発言がおかしいとは思わない。

進化していく世の中をチャンスと考え、変化に乗っかる準備をして、逆転を狙っていきたい。

こんな風に逆転を企むことのできる世の中は、なんて素晴らしいのだろうと思う。

社会主義の国でイキリ倒していたら銃殺されていたかもしれない。

江戸時代の日本で「下剋上でござる!」などと叫んでいたら切腹させられていたかもしれない。

豊かで平和な資本主義の日本に乾杯したい。


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