就職活動の会社説明会で、孫正義のプレゼンテーションを聴いた。
もうずいぶん前のことなので細かい内容は覚えていないが、孫正義の志高い生き方に心が震えたことは間違いない。
そんな志高いプレゼンテーションの中で、孫正義はたびたび司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の話をしていた。
彼が中学生だか高校生のときに『竜馬がゆく』を読んで、アメリカに行くことを決意したという。
会社を作ってから生死の境を彷徨うほどの大病を患ったときも『竜馬がゆく』を読んだ。
人生の節目節目で『竜馬がゆく』を読んで、
「こんなとき、竜馬だったらどうするだろう」
と考えながら道を切り拓いてきたそうだ。
小説が人の人生を動かし、そして大きな事業を成し遂げる一つのきっかけになるんだな、と感心した。
少なくとも僕がそれまで学んできた「日本史の勉強」で、自分の人生観に影響を及ぼすほどの衝撃を受けたことはなかったからだ。
今日はツイッターで、彼女に歴史の勉強をすすめる男性が話題になっていた。
彼氏は私のコンサルというか教育係w
— Q子(25) (@qko611) 2019年6月12日
勉強しような😂 pic.twitter.com/XUavV3gxzu
彼が求めているのは「教養としての歴史知識」である。
友人との集まりでそこまで長々と日本史の話をするかは正直わからないのだが、ざっくりと日本の歴史を学んでおいて、引き出しを増やしてもらうことを望んでいるのだろう。
この教養としての歴史の勉強は、若かりし日の孫正義を動かした幕末の物語とはまた別物だ。
両者はつながっているものの、響き方は同じではない。
「歴史を学ぶ」と一言で言っても4通りの目的があるように思う。
ひとつ目は、試験で点数を取るための勉強。
ふたつ目は、歴史を正しく証明するための研究。
みっつ目は、歴史のウンチクを語るための教養を身につけること。
よっつ目は、人生訓としての歴史を味わうことだ。
それぞれについて考えていく。
試験で点数を取るための勉強
試験で点数を取るための勉強はシンプルだ。
過去問を解いて、問題集の内容から逆引きして教科書を読み込めばいい。
歴史の流れを掴むには資料集のようなものもあると便利だろう。
事実の羅列を記憶するためには何度も繰り返し教科書や問題集を読み込む必要があり、決して面白いものではない。
僕はセンター試験の日本史の点数は90点以上は取れていたはずで、そのために日本史の教科書は隅々まで読み込んでいた記憶がある。
しかし、緑色の線で紙が埋まるくらい読み込んだ日本史の教科書から得られた教訓的なものは何一つない。
試験の点数が上がっただけで、人生観は全く変わっていない。
無味乾燥な事実の羅列を読んでも心に響かないし、ざっくり「なぜそれが起こったのか」を理解しても、それを人生の節々の判断に活かすのは難しい。
受験勉強で学ぶ歴史は原則として「客観的に正しい内容」が書かれていて、それゆえに主観で判断する自分の人生につなげるのは難しいのだ。
試験系の勉強のために読む本のイメージはこんな感じだろう。
決して面白くはないけれど、知識は増える。
教訓は得られないが、事実を整理することはできる。
個人的には、こういう教科書は歴史小説や歴史漫画で「個々の興味深いエピソード」を味わった後で最後に読むのがいいと思う。
印象に残った偉人が教科書のどの位置にいて、全体の中でどんな役割を果たしたのかが見えるからだ。
教科書的な本でいうと、百田尚樹さんの『日本国紀』も興味深く読めた。
賛否両論ある本だし、日本礼賛すぎる感じがするけれど。
- 作者: 百田尚樹
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正しい歴史を研究して証明する
大学教授とかが正しい歴史を発見するための研究もある意味で「歴史の勉強(研究)」と言えるが、どうやって研究しているかは詳しく知らない。
資料が発見されたり、明確な証拠が見つかったときに初めて「正しい歴史」として認識されるものだとどこかで読んだことがある。
「歴史的な資料を探す」
「正しい歴史を研究する」
というのも、歴史への触れ方の一つだ。
「研究」というレベルからは程遠いが、最近『蒼天航路』という三国志漫画の超名作を読んで、三国志の「正しい歴史」が知りたくなった。
陳寿の「正史(西晋にとって正当な歴史)」だけではなく、書かれていることの何がどこまで正しいのかに興味があったのだ。
そういう目的で勝ったのが上記の『三国志 演技から正史、そして史実へ』だが、元々興味があるものをもっと掘り下げる目的で、「研究=興味があるものを正しく理解するための深掘り」は大変有意義なものだった。
『キングダム』をきっかけにして司馬遷の『史記』を読むのもいい。
興味がないものを研究することなんてできないから、研究の対象は元々強く関心があるものがいいと思う。
歴史のウンチクを語る教養を身につける
件のツイートで語られていたのが「教養としての歴史知識」だろう。
歴史を教養として語るには、歴史上で起こった事実から何らかの教訓が得られていないといけない。
「教養」
というとざっくりとした表現になってしまうが、少なくとも歴史上の出来事をなんとなく覚えているだけでは「使える知識」にはならない。
歴史を語るなら、事実をただ記憶するのではなく、エピソードとして面白いものだったり、現代に当てはめて考察したり、誰かにとって何かしらの指針になるような学びがあるといい。
躍動感がある歴史というか、偉人の人間臭いエピソードがネタになる。
歴史から経済を学べば、現代の経済の動きを見るヒントになるかもしれない。
「話のネタになりそう」という意味では、『マンガ日本の歴史』と同じくらいサクッと読めて面白かったのは以下の三冊だった。
『やばい日本史』は薄くてすぐに読めるし、安いし、各人物に焦点を当てたエピソードも面白いものばかりでおすすめ。
薄い本で大きな流れを掴み、人に話せるウンチクを学んだあとは、『マクニール世界史』みたいな定番と呼ばれる本をじっくり読んでいくのが「教養を身につけるための歴史学習」の王道だと考えている。
ちなみに自分はさらに色々と興味が広げて、『西洋美術史』とかも勉強しようと企んだけど、まだあまり興味が持てなかった。
- 作者: 本郷和人,和田ラヂヲ,横山了一,滝乃みわこ
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人生を変える感動を得るための読書
司馬遼太郎の小説を読んで人生が変わったという人は何人もいるけれど、彼の小説は「志高く生きよう」という男心を刺激する。
「事を成し遂げる人間は何を考えどう生きてきたのか」
を考えさせられるし、小説としても抜群に面白い。
歴史小説は教科書でいうと1ページにも満たない部分の出来事を深く深く掘り下げていく。
教科書の1ページには数え切れないほどの多くの人の人生があったのだ。
その人生に焦点を当てて、物語を動かしていくのが歴史小説である。
作者の歴史観に強く影響を受けるが、それは人生の指針になる。
今、自分が直面している悩みと小説の一場面がリンクするので、
「彼ならこう考えるはずだ」
とヒントとなりやすい。
歴史を人生の糧にしたいなら、歴史小説はすごく良いと思う。
著者の歴史観に強く影響を受けるとしてもだ。
- 作者: 司馬遼太郎
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また、人生を変えるかどうかはわからないが、歴史的な出来事を題材にした漫画を読むのもいい。
『キングダム』や『蒼天航路』は中国の歴史に興味を持つきっかけとして最高だ。
『センゴク』や『信長のシェフ』、『お〜い!竜馬』も面白い。
ちなみに『お〜い!竜馬』の原作の武田鉄矢は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の熱烈なファンだ。
『マンガ日本の歴史』などはざっくり通史を眺めるにはいいが、個々のエピソードは深掘りされておらず、心にガツンと響くようなストーリーにはなっていない。
やはり誰かの人生に焦点を当てた物語こそが、自分の人生を考える礎となるのだろう。
通勤電車や土日の空いた時間で歴史小説を楽しむことで、熱い情熱みたいなものが掻き立てられるし、歴史ネタにも詳しくなる。
歴史小説はとっつきづらいイメージがあるかもしれないが、食わず嫌いせずに読んでみると意外とハマるので、時間があるときに騙されたと思って読んでみてほしい。