房野史典さんの『超現代語訳 幕末物語』がめちゃくちゃ良い本だったから、歴史に興味がある人はみんな読んでほしい



本屋に出かけたときにたまたま見つけた『超現代語訳 幕末物語』が最高でした。


予備知識なしで手にとって

パラパラと立ち読みしてみたときは、


「軽いノリだな〜。大丈夫かよ...」


と思っていました。

ブログでも読んでるかのような文体で、


「歴史を勉強する」


雰囲気が全く感じられなかったからです。


が、読み進めてみるとむしろ、軽いノリだからこそ出せる味わい深さがありました。


複雑だった幕末の事件の流れがスルスルと頭に入ります。

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僕は歴史のウンチクを語れるようになりたいなと思って、今まで「固い本」は今まで何冊も読んできました。

センター試験は「日本史」で100点中92点(だったかな)


『竜馬がゆく』

を読んで涙し、『世に棲む日日』を読んで高杉晋作に憧れました。


そんな風にウンチクのために色々と勉強してきても、歴史の流れはどうも腹に落ちないまま悶々としていました。


小説を通じて英雄のエピソードに感動しても、歴史の大きな流れはつかめません。

また教科書で細々と用語を覚えても、背景にあるものは見えません。


歴史を作るのは人間であり、人間を理解するには「そのときの人々の感情」を想像しなければいけません。


なぜ、そのような事件を起こしたのか?

どうして、そのような事件に至ったのか?



『超現代語訳 幕末物語』を読み通すことで、今まで見えなかった「幕末の全体像」がスッキリと見えた気がしました。

目が開けたような思いです。


最近ちょうど『竜馬がゆく』を読み返していたのですが、

司馬遼太郎作品は『超現代語訳 幕末物語』を読んでからの方がより一層楽しめるように思います。


作品の背景にあるものが頭に入ってきやすくなるからです。


『超現代語訳 幕末物語』が素晴らしかったので、房野史典さんの第一作目の『超現代語訳 戦国時代』も買ってしまいました。


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これから読むのが楽しみです。

ブログに歴史ネタを挟んでいけるでしょうか。


それでは、ここからは少し『超現代語訳 幕末物語』の素晴らしい点を紹介していきます。


基本的な用語を説明してくれる(しかもフリガナつき!)


幕末に関する本を読むと、どの本でも「尊王」、「攘夷」、「老中」、「譜代」のような用語を当たり前のように使ってきます。

漢字からなんとなく、「天皇を敬う人なんだろうな」とか、

「外国人を追い払おうとしてるんだろうな」っていう雰囲気はわかりますが、

ちゃんと調べないと意味はわかりません。


『超現代語訳 幕末物語』はこういう基本用語の紹介を絶対に端折りません。


『超現代語訳 幕末物語』では他の本では当たり前に扱われがちな用語を解説した上で、

「現代で言うと○○」のようにわかりやすく例えて解説してくれます。


「老中」がとても偉いのはわかりますが、どれくらい偉いかというと、「現代なら○○大臣」みたいに補足してくれます。


どんな立場の人が、どんな事情を抱えて、どういう行動を起こしたのかを説明してくれるので、読みながら


「ん?」


と詰まることがありません。

そのお陰でスラスラと歴史を理解することができます。


エピソードが面白い

登場人物のエピソードの紹介がいちいち面白いです。


以下のやり取りは読みながら普通に笑ってしまいました。


「徳川家を無力化する」目的で開かれた小御所会議のあと、旧幕府側と新政府側が揉めます。

薩摩藩が保護している浪人たちが暴れて庄内藩相手に発砲したことがきっかけで、旧幕府のみなさんが怒り狂ったシーン。

会津藩「薩摩がそんなことしてくれたのか....」

桑名藩「もう我慢できねーなー...」

旧幕府兵士「薩摩と戦争だーーーー!!」

慶喜「待つんだ!」

会・桑・幕兵「待たない!!」

慶喜「待たないのか!!」


慶喜くん、完全怒りモードになった部下たちを制することができません。


西郷隆盛と勝海舟の江戸城総攻撃前日の会談の描写も痺れました。

新政府軍が江戸城総攻撃を控えた3月14日。


新政府軍の江戸城総攻撃が始まれば、江戸は火の海。

日本はボロボロになり、

その隙に列強に攻め滅ぼされてしまうかも知れません。


旧幕府側を代表して、新政府側の参謀・西郷隆盛との会談に挑む勝海舟。

旧幕府側には抵抗の意志はありません。



新政府側の要求を譲歩できるギリギリまで緩めるように交渉し、

交渉が決裂したら日本が終わる...という瀬戸際でした。


勝海舟は交渉の中で、

「西郷なら、オレのことを信用してくれるはず。

徳川や新政府という垣根を越えて、日本のための選択をしてくれるはずだ」

と期待します。


勝の思いが届かなければ、会談翌日に戦争が始まります。


西郷から口から次に出る言葉で、この国の運命が決まる。



西郷「.........いろいろ」



戦争か、それとも...



西郷「いろいろ難しい議論もあるでしょうが、私が一身にかけてお引き受けします」



勝の立場と思いをくみ取り、自分が責任を持って新政府へ説明する。

西郷が決心した瞬間でした。



『超現代語訳 幕末物語』では勝と西郷のやり取りの紹介を以下のように締めています。


この瞬間、100万を超える江戸市民の生命と財産が救われ、徳川家も滅亡を免れたのでした。


”私”を捨てて、”公”を選び、どこまでも人の命と未来を考えた勝海舟。

どんな難問にも、全責任をとる度量の大きさを見せた西郷隆盛。


この二人だったからこそ、


《江戸無血開城》


と呼ばれる奇跡が起こったんじゃないかと思います。

『超現代語訳 幕末物語』では他にも、


「世の人は 我を何とも 言わば言え

我がなすことは 我のみぞ知る」


という坂本龍馬が詠んだ歌や、

高杉晋作の辞世の句、吉田松陰の思想も紹介してくれます。



このツイートは吉田松陰先生のエピソードを読んで書いたものです。


「なぜ」と「流れ」がわかる

高校の日本史は

『金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本』

という本がダントツでわかりやすかったのですが、

それは「起こった出来事の理由と経緯を教えてくれたから」です。


歴史には流れがあります。

過去からつながって、人の感情が動き、事件が起こります。


それらの流れを理解することなしに機械的に暗記しようとすると、

全然頭に入らない上に歴史がものすごくつまらないものになります。



『超現代語訳 幕末物語』がわかりやすく、そして面白いのは、

歴史の「なぜ」と「流れ」をものすごく丁寧に、読者が置いていかれないように紹介してくれるからです。


本を読みながら、高校の授業を思い出しました。


日本史の先生が『超現代語訳 幕末物語』と同じくらい、

歴史を面白く、魅力的に伝えてくれたらどんなに素晴らしい授業だっただろうか...、と思わずにはいられませんでした。


僕の高校の日本史の先生は正直イマイチでした。

謎の自作プリント(教科書の劣化版)を配り、ひたすら先生の板書を見ながらプリントの穴埋めをしていく...

という退屈極まりない授業でした(寝てたら怒られました)


歴史をプリントの穴埋めで語るなよ。

教師なら、歴史から得られる教訓を生徒に伝えろよ、と思います。

事実は教科書で学ぶからさ、もっとエモい授業をしてくれよと。


とは思いますが、そういう先生に出会ったことは一度もありません。


平成最後に維新の兆し

明治維新から150年が経ちました。

旧態依然とした徳川幕府の屋台骨が揺らぎ、黒船の襲来によって一気に歴史が動いていった幕末と、

スマホやAIのようなテクノロジーが人々の暮らしを変えようとしている現代は、どこか似ているようにも思います。


「いい大学に入って、大きな会社に入れば安泰」

という”絶対の価値観”が崩れつつあるところも、どこか幕末風の空気を感じます。


安政の大獄で処刑された吉田松陰はこんな句を遺しました。



「狂愚まことに愛すべし、才良まことに虞るべし」


と。


狂って常識がわからないバカは、”行動”を起こす愛すべき存在だ。

一方、頭だけで考えて理屈を言っていると、何もことを起こさなくなるので恐ろしい。


上でツイートしていたものですね。


松蔭の言う


「狂う」


とは、


「有り余るほどの情熱を持ち、常識から外れて夢中になる」


ということです。


誰からもたたかれはしないが、後には残らない”才良”を取るのか、

”常識”と言われるものからは外れているかもしれないが、自分の信念に従って生きる”狂愚”を取るのか。


吉田松陰の



「諸君、狂いたまえ」


という言葉は、維新から150年を経てなお、我々の胸に響く重みを持っているのではないでしょうか。

笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語

笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語


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