俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

「俺のこれまでの情熱的な関係はすべて、情熱的に始まったんだ」




俺は彼女の下に腕を滑り込ませ、肩の上に彼女の頭を乗せた。

俺は「俺のこれまでの情熱的な関係はすべて、情熱的に始まったんだ」と声をかけた。

これはミステリーのセリフだが、俺は本当に信じていた。

続けて、「君は自分では欲しがってはいけないと思っているのに、欲しがっているし、必要ともしている」と告げた。これは、ロス・ジェフリーズから学んだセリフだが、俺はこれもまた信じていた。

三番目は「俺は君がこれまでに一緒にいた連中よりも大人だから、君のこれまでの経験で俺を判断しないでくれ」だった。
これはデイビッド・Xからいただいた。

最後は「君にもう会えないのは悲しい」だった。これは、ほかの誰かのセリフじゃない。


「The Game」より

yamadaと俺は、夜の六本木を歩いていた。
時刻は3時。クラブに疲れて、帰る前にひと声かけをして行こうと言い出したのがきっかけだった。


「やぁ、パーティーの帰りかい?」


ナンパ界ではおなじみのこのセリフは、実は非常に汎用性が高いオープナーとなる。
このセリフのまま言っても、なんか面白いし、アレンジはいくらでもできる。

結局、夜の声掛けのオープナーは、テンションが一番大切だということだ。


yamada、とにかくハイテンションで行こう。
向こうのエネルギーよりも、こっちのエネルギーが上回るように。

信号の向こうから歩いてくる二人を見つけた。


さぁ、行こう。


「お疲れーーっ!ちょ、二人めっちゃテンション高いやん!

なんのパーティ帰りなのさww」

と気持ち大きめの声、大きな身振りで声をかける。


「そのテンション、絶対街コン帰りでしょw
てゆうか、合コン帰りでしょ!」


「あーアレね、合コン行ってもいい男がいなかったから無理やりテンション上げてるアレね!」

女の子がキャハハと笑う。


「これからV2に行くの」


「あー。だと思ったわ、このクビにつけてる光りモノつけてる女はV2の回し者だと思ったね。

わかりやすすぎでしょwどこのパーティガールよw」

なんて会話しながら、LINE交換。

その数日後にアポを取り付けた。





★ ★ ★


「お疲れ様!
あれ、こないだ夜に見た時よりも可愛くなってるから誰かわからんかったw」

「何言ってるのw」

「平日は全然パーティ・ガールじゃないじゃんw
意外とまともに仕事してそうなことにビックリしたw」

「ちゃんと仕事してますー!w」

なんて会話でアポはスタートした。

近くのお店に歩く。
お店までの経路、そしてそこから家までの経路はすでに予習済だ。


雰囲気がよく、静かな店だった。
最初は正面に、後半は席の隣に移動していた。


アポ中に隣に移動する口実によく使うのが、

「写真見せて」

だ。

女の子は旅行の写真とか、女子会の写真とかをよく、スマホで撮りまくっている。
その写真の話をしているときに、

「見せて?隣に行っていい?」

と切り出す。
横並びのほうが、より親密に会話を進めることができる。
二人の物理的な距離は、心理的な距離と比例するものだ。


彼女は、女子の合コン事情やこれまでの恋愛のことをあけすけに話してくれた。


「合コン中に女子同士でトイレに行って、会社名で年収検索するよね」

「年収1000万行く見込みないとか無理。最低800万」

「フリーランスとかダメ。友達と大企業の男コレクションしてるw」


そんな話をアポ中にされて、東京はすごいなぁと思った。
「東京姉妹」や「レイまゆ」みたいな奴は、架空の人物ではなく、普通にいるんだな、と思った。
三菱商事やゴールドマン・サックスみたいな単語がよく出てきた。

商社マンは、婚活女にとってのブランドだ。
「商社マンと飲んだ」というだけで話題になる。

お前は発展途上国に行く気があるのか?と聞くと、
アメリカやヨーロッパは行きたい。でも、汚いアジアは嫌だ、と言った。

商社の友達は、ベトナムに行ったりインドに行く奴もいる。
彼女がほしがっているのは、「商社マンの嫁」というブランドなのだろう。


会話中、こちらの仕事や年収を気付かれないように探ろうとしているように見えた。
そして、彼女たちがしていることが間違っているとは思えなかった。

女は、「生き残りと複製」という男たちの生きる目的を手伝うかどうかを決めるために、彼らの価値を絶えず審査するものだからだ。


俺はとりあえず、「週末は空き缶を拾って生計を立てている」と言った。

平日は、ジャパネットたかたでユニクロを売ってると言った。
ジャパネットたかたもユニクロも、誰もが知る大企業だ。
俺はたかた社長の右腕だ、とも言った。

問題は、俺がジャパネットたかたを使ったことがないことだけだった。


逆説的だけど、高収入の男をギラギラと求める女が、本当に高収入の男を手に入れられる可能性は低い。
なぜかというと、高収入の男はだいたいにおいて、知性があって自立した女性と一緒にいたいと思うものだし、金があっても、自分の金を目当てにするような子と一緒にいることを嫌うからだ。

そして、知性があって自立した女性は、その女性自体が高収入である場合が多く、お金にがっつかない。

あるいは、もしかすると、知性がある女性は、たとえ男の収入にがっついていたとしても、それを気付かせない演技力があるだけなのかもしれない。

女性は、金にこだわりたいときこそ、

「お金なんてどうでもいい。一緒にいる人がダメになったら私が支えたい」

くらい言うのがいいと思う。
男はそう言う言葉を聞くと、

「この子はいい女だ」

と思う。

女版ルーティーン「献身的な乙女」である。

本心は関係ない。
大切なのは、見せ方だ。


なんだかんだ、会話は楽しかった。

記事にすると、なんか女の子を批評しているように見えるけれど、実は、あけっぴろげに会話するのはとても楽しい。

嫉妬やコンプレックスは何も生み出さない。
嫉妬やコンプレックスを捨てれば、たいていの会話は楽しんで聞くことができる。


そんなことより、俺はどうしても使いたかったセリフがあったんだ。
冒頭のセリフである。


「俺のこれまでの情熱的な関係はすべて、情熱的に始まった」

これはスタイルというThe Gameに登場する人物の言葉だが、俺はずっと、このセリフを使いたいと思っていた。

できれば、エッセンスを取り出して、日本風にアレンジして。


「もう少し一緒にいたいんだけど、時間あるか?」

店を出て、そのまま自宅にお招きした。

隣に座って、お酒を飲む。

「近くで見ると、きれいな顔してるよね」

「なにそれー」

なんて言いながら、距離を縮める。
ゲームは終盤に差し掛かっていた。

唇を重ねた。
それから、徐々に下に手を伸ばす。

「チャラい人なの?」

「まだ早いよ」

LMR(Last Minute Resistance=最後1分の抵抗)というものだった。
これは、ASD(Anti-Slut Defence)でもある。「自分は軽い女じゃない」という表現だ。


ずっと言おうと思っていたセリフを言うべき瞬間(とき)がきた。



「・・・俺は、今までの恋愛で、すごく好きになったり、ずっと一緒にいたいと思った人とはいつも、最初のデートで情熱的な関係になってたよ。

恋愛って、一回目で魅力的に思わなかった人を、二回目に会った時にいいなって思うことはないと思うんだ」


「俺は、今日は、大切な一回目のデートだと思ってる」


彼女は無言になる。
ここまで来たら、「押し引き(push-pull)」を使う。

「押し引き」は、引き離したり、素早くぐっと引き寄せたりして、彼女の気持ちがずっとこちらに向いているようにするためのテクニックだ。


「でもそれで嫌なら、仕方ない。嫌なことはしたくないから」

押して、引いてを丁寧に、繰り返す。
この日は、雰囲気をぶち壊す必要はなかった。

彼女とベッドを共にした。
素晴らしい夜だった。



「結局、なんの仕事してるんだっけ?笑」


すべてを終えたあと、お互いの仕事の話をした。

そこに年収は必要なかった。