【感想】「外資系金融のエクセル仕事術」とは何か



はてなブログで話題になったExcelの記事を見て心動かされるものがあったので、早速おすすめされていた本を買って読んでみました!

「外資系投資銀行のエクセル仕事術」という本です。

割と知ってる内容も多い上に、1時間半〜2時間程度で読める本ではありますが、本から得られた内容を実践することで、2時間分以上の業務効率の改善にはつながりそうです。

著者の熊野整さんが強調しているのは主に3つ。

  • 見やすいエクセルにしよう
  • ミスのないエクセルにしよう
  • 速いエクセルにしよう

ということ。

本の中では投資銀行ではという言葉が何度も使われます。

著者がいかに投資銀行を誇りに思っていたかがよくわかります。

ところで熊野整さんの自己紹介ですが。

ボストン大学卒業後、モルガン・スタンレー証券投資銀行本部に入社し、大型M&Aや資金調達プロジェクトをリード。
退社後はグロービス経営大学院にてMBA取得。
その後、大手上場インターネット企業に入社し、事業責任者として事業計画の立案から戦略遂行までを行う。

なんで大手上場インターネット企業のところだけ経歴を伏せるん!

インターネット企業で可能性を追いかけたことも素晴らしい経歴だよ!


まぁ、それは置いといて。


Excelとはその名の通り、Excellent(卓越した)社畜のためのツールだということです。

社畜である以上、仕事はできるだけ素早く、正確に、そしてわかりやすい資料を作成し、上司に報告しなければいけません。

この本には、そのためのTipsがたくさん散りばめられていました。

Excelは見た目が9割

さて、外資系金融のエクセルの本で何度も何度も強調しているのは、フォーマットの重要性です。

誰が見ても「きれいだ」「わかりやすい」と思うフォーマットを会社全体で共通して使うことが重要だといいます。
「使いやすくわかりやすいフォーマットを全社で標準化せよ」ということです。

正しいフォーマットを全社員が守ることで、計算ミスを減らし、分析内容の理解度を上げ、顧客の信頼を勝ち取る、ということが期待できます。

では、綺麗なフォーマットとはどんなフォーマットか?
詳しくは本を読んでほしいのですが、ざっくり言うと以下の通り。

  • 行の高さは18
  • 文字サイズは10ポイントか11ポイント
  • 単位を明記する
  • 数字のフォントは「Arial」。日本語は「MS P ゴシック」
  • 数字はカンマで区切る
  • 罫線の太さにメリハリをつける
  • 縦の罫線は消去
  • 横の罫線は薄い色で細く
  • 文字は左揃え、数字は右揃えにして、縦線は使わない
  • 数字の色を変える(ベタ打ちの数字は青、計算式は黒、他シートを参照したものは緑)
  • 薄い色で背景の色を変える
  • デフォルトの枠線を白で塗りつぶして消す

ここまで箇条書きして、「あっ」と思った人もいるかもしれません。
そうです。
これって別に、外資系じゃなくてもやってますよね。

つまり、「当たり前のことを当たり前にやる」ということが大事なんです。
外資系の優秀なサラリーマンも当たり前のことを当たり前に、ミスなくやっているだけなのかもしれません。

ちなみに本のコラムで、外資系銀行の勤務時間について書かれていました。

164ページの「投資銀行はどれくらい仕事をしているか」というコラムです。

筆者の場合は、だいたい毎日、深夜1時くらいまで仕事をしていました。
毎日夜中3時まで仕事が続くと、「最近忙しいな」と感じ、逆に深夜12時くらいにオフィスを出ると、周囲から「あいつは最近ヒマなのか」という視線を受けていた記憶があります。
また、入社1年目は、元旦以外は終末も含めて毎日出社していた記憶があります。
大晦日も夜中まで仕事をしていました。

友人のキラキラ女子から「外資系銀行マンの合コンは深夜3時から始まる」という話を聞いたことがありますが、これは割とマジだったみたいですね。
みんなが羨む高給の裏で、尋常じゃないプレッシャーの中で毎日馬車馬のように仕事をしているのが外資系金融マンなのです。

外資系金融のエクセル風に表を作るとこんな感じになります。


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フォントの違いはツイート参照。

10秒のカイゼンを積み重ねる

外資系投資銀行のエクセル本で強調されていたのは、「作業時間を短縮するためにショートカットを駆使せよ」ということでした。

外資系投資銀行で働いていた熊野さんは、配属先の先輩社員から

「お前、今日からマウス使うの禁止な」

と言われたそうで。
とにかく作業時間の短縮が求められています。

それもそのはずで、上に書いたように、彼らは朝から夜中までずっと仕事をしているわけです。
作業時間を短縮できないと睡眠時間が短縮されてしまう!

だから、1秒でも時間を稼ぐためにショートカットキーを駆使します。
自分もショートカットキーは割と多用しますが、マウスを使うよりも全然早いです。

ついでに言うと、Excelだけじゃなく、他の作業でもマウスをできるだけ遠ざけてみましょう。
まず、Windowsならランチャーソフトを入れましょう。

Executorがいいです。

http://executor.dk/


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こんな感じで、コマンド一発でランチャー画面が立ち上がり、呼び出したいアプリケーション名を入力するとすぐに起動することができます。

いちいちマウスでアイコンクリックしなくてもアプリを立ち上げられるため、重宝します。

MacだったらAlfredですね。
https://www.alfredapp.com/


次にブラウジングもマウス離れさせてみましょう。

Chromeに「Viminum」というプラグインを入れてみてください。
https://chrome.google.com/webstore/detail/vimium/dbepggeogbaibhgnhhndojpepiihcmeb

いちいちマウスでクリックしなくても「i」を押すとリンク先を選択できます。

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上のサンプル画像ではツイッターの画面ですが、こいつが最も活躍する場面はおわかりですね?
みんなもいつも困っているはずです。

右手で別のものをいじっている時は、右手でマウスをいじる余裕はない。

僕は右手を開放することに命をかけ、そのためだけにこのプラグインを探しました。
ネットサーフィン中、右手でマウスを握る余裕なんてないのです。
別のものを握っているからです。

こうやって、マウスから開放されると、日々の生活が豊かになります。

ちなみにvimium。「b」を押すと、ブックマークの入力ボックスが出てきます。
ブックマークは整理が大変ですが、キーワードを入力すると一発で候補が出てくるのでとても楽です。

僕の無数にあるブックマークはもう整理できなくなったので、bボタンで探すようにしています。

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最後に、Excelの便利ショートカットを一覧にします。
なんだかんだ作業時間の短縮に貢献してくれます。

特にAltへのこだわりには狂気にも近いものを感じました。

ちなみに、本の中ではこんな風に書かれています。

外資系の投資銀行はエクセルの計算が本当に速い。少数精鋭で1人が3人分の仕事をこなすため、何においてもスピードが要求されるからです。
外資系投資銀行に新卒で入社すると、ニューヨークまたはロンドンで3週間ほどの研修をウケます。その時間の多くは、エクセルの使い方を学ぶことに費やします。

いきなりエクセルのショートカットキーを50個くらい記載したシートが配られ、すべて覚えろと言われます。

「外資系投資銀行のエクセル仕事術」126ページ

以下が覚えておきたいショートカットの一覧です。

ショートカットキー 機能
背景色を変更する [Alt]→[H]→[H]
文字色を変更する [Alt]→[H]→[F]→[C]
フォントを変更する [Alt]→[H]→[F]→[F]
文字のサイズを変更する [Alt]→[H]→[F]→[S]
枠線で囲む [Alt]→[H]→[B]→[A]
右揃えにする [Alt]→[H]→[A]→[R]
左揃えにする [Alt]→[H]→[A]→[L]
グループ化する [Shift] + [Alt] + [→]
参照元のトレース [Alt]→[M]→[P]
参照先のトレース [Alt]→[M]→[D]
トレースの削除 [Alt]→[M]→[A]→[A]
グラフを表示 [Alt]→[N]→[N]
形式を選択して貼り付け [Alt]→[H]→[V]→[S]
セル内で改行 [Alt] + [Enter]
選択したセルの規定値を編集する F2
同じ作業を繰り返す F4
書式を設定する [Ctrl] + [1]
書式を設定するポップアップでタブ移動 [Ctrl] + [Tab]
他シートへ移動する [Ctrl] + [PageUp], [PageDown]
行をまとめて選択 [Ctrl] + [Shift] + [→(矢印)]
直前の操作を元に戻す [Ctrl] + [z]
セルの行や列などの端までジャンプする [Ctrl] + [→(矢印)]
前の選択したセルをそのままにして範囲を広げる [Shift] +[→(矢印)]
行または列を挿入する [Ctrl] + [Shift] + [+]
行または列を挿入するをさらに速く [Ctrl] + [Shift] + [+] + [R] or [C]
新しいシートを挿入する [Shift] + [F11]
デスクトップを表示 [windowsマーク] + [d]
今日の日付を入力する [Ctrl] + [;]
今日の時刻を入力する [Ctrl] + [:]
セルにコメントを追加する [Shift] + [F2]

本ではExcelのヘルプがウザいということで、F1キーをひっぺがせと言われていますが、個人的には物理的にキーボードを破壊するのはスマートじゃないと思います。

マクロを仕込みましょう。


以上、「外資系投資銀行のエクセル仕事術」を読んだ感想でした!
できるだけ作業時間を短縮して、正確なアウトプットを出そうとする姿勢はさすがだと思いました。





最後に色々と褒めてきましたが、外資系投資銀行で働いていてもやはり若いうちはExcel舞台でこき使われていたような印象を受けたのも事実。

あとやり方がどうも「人間の性能をアップさせる」方向で進めているようで、外資を誇る割にスマートじゃないなとも思いました。

Pythonを学び、VBAを学び、人間の作業の効率を上げるのではなく、プログラムに作業させることを考えたほうがずっと正確で早く仕事を終わらせることができると思います。

単純な計算とか集計みたいな退屈な作業は「早く終わらせる」のではなく、「プログラムが勝手にやってくれる」状態にするのが良いです。

その余った時間で、人間にしかできない創造的な作業を行いましょう。