俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

「君はもっと大人の色気を出した方がいい」と言われた。





「この歳になって若く見えるって、別に武器でも何でもないからね」

比内地鶏の焼き鳥を頬張りながら彼女は言った。

「社会人になってから、見た目が大学生って。そこ、喜ぶところじゃないよ」

彼女は口に含んだ焼き鳥をビールで流し込んだ。


年を取れば取るほど、「若く見えること」はアドバンテージだと思っていた。
化粧水やらシャンプーやら、美容グッズ的なものにお金を使ってきたのも、若く見せるためだった。

街で初めて会う女の子に、

「大学生みたいだね」

とか、

「その歳に見えなーい」

なんて言われて嬉しかった。
若く見えるって得だな、と内心ほくそ笑んでいた。

頭頂部が薄くなってきた高校の同級生や、肌がしわくちゃになり始めた大学の同期を見て、安心していた。
自分への投資が報われたようにも思えた。
少なくとも、俺はジジイには見えないはずだ。


彼女は言う。

「仕事を頑張ってるんだったら、それなりにお金を稼いでるんだったら、見た目もそういう大人の男にならないとダメ」

彼女は焼き鳥に添える豆腐を食べながら続ける。
素材は悪くないのにもったいない、とも言った。


「君は、銀座や六本木でモテたいんでしょ?東京の真ん中で、モテる大人の男になりたいんでしょ?この街は、どういう街かわかってる?」

彼女はずけずけとモノを言う。
自分にこんなにモノを言う子は初めてかもしれない。接してくれる女の子の多くは、俺に合わせてくれた。
俺もそれを強いていたのかもしれない。

自分を偽るのをやめた。
強がりの皮をはぎとって、素直に答えた。


「銀座とか六本木で、モテるようになりたい、と思っている」

「この街でのいいオトコってどんなオトコかわかる?」

「仕事ができるビジネスマンだ」

「じゃあ、見た目が大学生じゃダメ。大人の色気を出さないと。仕事でもきっと、損してるよ」

大人になればなるほど、自分に何かを言ってくれる人は少なくなる。
特に、ここ最近のように、フラフラとナンパして出会う女の子の場合、

「俺が嫌ならそれでいいよ。他に行けば」

というスタンスで接してきていたように思う。

歯に衣着せぬ批評をしてくれる女の子は貴重だった。
色々と言われて気持ち良いくらいだった。

振り返ると、俺は今までずいぶんと損をしてきたのかもしれない。
他人からのフィードバックは自分を変えるきっかけになるものだったのだとやっと気付いた。
そして、もっと前から他人が意見を伝えやすい雰囲気を作るべきだったと反省した。


人からのフィードバックを取り入れれば、俺はもっと変わることができる。


話を聞きながらふと、

変わらなければ、替えられる

という言葉を思い出した。

アルファブロガーの"ちきりん"が、自著で語っていた言葉である。

大学生の頃から、Googleで「男 髪型 無造作」と検索して出てくるような髪型にしていた。服装も、ストリート系よりの格好をしていた。

俺が「こうなりたい」と考える見た目のイメージは、大学生の頃からずっと同じままだった。
何も変わっていなかった。
年齢だけが積み重なっていった。

いつまでも変わらないというのはありえない。
変化に関してもっと寛容に、冒険に対してもっと積極的になるべきだった。

歳と共に、モテ方も変えていかなければいけない。
俺のやり方は、大学生の時と何も変わっちゃいない。
トークも、見た目も。

いつまでも変わらないと、他の誰かに替えられてしまうんだ。

最初はうまくいかないかもしれないけれど、もっと冒険してみよう。
春はデビューの季節だもんな。

ワンデーアキュビューみたいに、「ほんとの私デビューの気持ち」で、変化を楽しみたい。