大学時代、mixiで面白い日記を書くことに人生の全てを賭けていた時期がありました。
あの時代は牧歌的でよかったですね。
今時の若い人は、日本中の大学生がmixiやってた時代を知らないでしょう。
あのサービスは、本当にすごかったんです。
大学のパソコン室に行ったら、ほとんど全部の画面がオレンジ色になってるくらいに。
みんな、mixiやってました。
で、そんなmixiには「あしあと」という機能がありまして。
誰が自分のページに来たかがわかるようになっていました。
ちょっと可愛い子に「あしあと」付けに行ったりして、でも毎日ついてたらキモいから2日に1回だな、なんて微調整したりして。
日本のSNS黎明期をみんなが楽しんでいたわけです。
そこで冒頭の話に戻るのですが、面白い日記(自称)を書いていると、たまに知らない人がコメントくれることがあります。
「日記面白いです(ドコモの絵文字)
メッチャ笑いましたぁ(ドコモの絵文字)」
みたいな。
そんなコメントを見て僕は夜神月のごとくほくそ笑んでいたわけですが、ある日のこと。
突然、
「日記おもしろーい(絵文字3連発)」
というちょっとの頭の悪そうなコメントがつきました。
突然なんだよオイ、と突っ込みたくなりましたが、よく見るとプロフィール写真がめちゃくちゃ可愛いんです。
天使が服着て歩いてるような。
当時のSNSでは自分の写真公開している人は珍しかったんですけど、その子は何枚も自分の写真載せてて、その全てが天使じみてた。
僕は驚きました。
「世の中にこんな可愛い子が存在していたのか」
なんて思いながら、井の中のヒデヨシ、大海を知らなかったことを恥じました。
その子の「アルバム」を一枚も残すことなく確認し、3度くらい見返して1度くらいシコシコした後、僕は決心しました。
「この子に、会いたい」
と。
そう決意するや否や、僕がすぐさま取り掛かったのは、自分のブランディングです。
まずは、紹介文を武装しなければならない。
だってそうでしょう?
その子の紹介文、上から下まで
XXはめっちゃ可愛い!
目がクリクリでとっても素敵なXX先輩に出会えて幸せです!
XXは神!
みたいな感じで褒められまくってたんだもん。
それに比べ、僕の紹介文はチャラいだの、イタズラばっかりしてるだの、授業に来ないだの、深刻な風評被害に汚染されていました。
一刻も早く軌道修正しなければ。
そう思った僕は、すぐにサークルの後輩に電話しました。
「もしもし、どうしたんすか?」
「おい、重要な頼みがある」
「なんすか?」
「mixiの紹介文を書いてくれ」
「mixiっすか?」
「ああ、必ず『イケメン』という文言を入れるように。書いてくれたらラーメン奢る」
5人の後輩に同じ指示を出し、従順な後輩たちはたかが学食のラーメンのために素晴らしい紹介文を書いてくれました。
その後は、友達のイケメンをあたかも自分であるかのようにプロフィール画像に設定しました。
ツイッターでも、プロフィールがイケメンのアカウントはなぜかイケメンに見えるように、mixiプロフィールをイケメンにすることで、なぜか色んな女の子からメッセージが届くようになりました。
イケメン本人はなぜかちょっと喜んでいました。
安心しろ、お前にはその子は紹介しない。
...完璧でした。
紹介文も、プロフィールも。
完璧なまでにブランディングされてました。
それからはずっと、機を伺っていました。
いつか何かのきっかけでメールしたい。
でも、下心を見せたら嫌われてしまうんじゃないか...
なんて考えると、何もできん!
今も昔も変わらず、可愛い子には何もできないんだ!
そんなブランディングを施したまま何もせずに1年が経つ頃、たまたま旅行に行く予定があったので日記に書きました。
すると、
「すごーい
羨ましい
私も行きたーい」
というちょっと頭の悪そうなコメントがつきました。
例の天使です。
天からの声が聞こえたのは、そのときでした。
今しかない
このチャンスを逃したらいつ会えるかわからない
僕は「メッセージ」という機能を使って、メールを送りました。
こんにちは!ヒデヨシです!
ウンタラカンタラ(長文)
お土産買ってくるので、ちょっと会えませんか?
どうだ───。
翌日。
えっいいんですか!?
ほしーい
というメールが届き、僕は画面の前で小躍りしました。
長さは僕の長文メールの3分の1以下だったけど、でもよかった。
やっと会える!
1年間、ずっと想い続けた天使に!
天使とのご対面
で、大学3年生のときに初めて、その天使女に対面したんですが、実物写真よりはるかに可愛くって、最初の一言が
「顔が俺の半分の大きさしかねぇ...」
でした。
緊張しすぎて何を話したか全く覚えてないんですが、天使にガクブルしてビビってる僕にロマンスの神様が微笑むはずもなく、普通にキャッキャウフフとお友達になって帰りました。
今はもう、あれからずいぶん時間が経って、mixiのパスワードすらわからなくなったんですが、時代は変わってもLINEやFacebookでつながり、インスタグラムで謎のいいねを送りつけるような友達になっています。
mixiが流行ってた頃はSNSで知り合った人と実際に出会うっていうのはかなり抵抗があったんですが、今ではFacebook連動のマッチングアプリが普通に使われるようになって、ツイッター上の人とオフ会も頻繁に行われています。
中には自分が今まで所属してきたコミュニティでは出会えないようなすごい人や、あるいは天使みたいな女の子だったり、インターネットの向こう側には本当に色んな人がいます。もちろん、リアルでは関わらないような変な人もいるけども。
今まで見ることのなかった点と点をつなげるという意味で、インターネットをきっかけとした出会いには大きな可能性があると思います。
一度作った関係を丁寧に育てていけば、5年経っても連絡を取り合えるような友達にもなれるしね。
出会いに貴賎なしです。
リスクはあるけれど、よい出会いもたくさんあります。
ネットの出会いを侮ることなかれです。