花の香りを嗅ぐイケメンの自撮りを見つけた時、僕の心は揺れた。
イケメンであった。
ごく稀にではあるが、僕のタイムラインにもイケメンの自撮りが流れてくる。セクシービデオ界隈で
「プロの女優より素人の方が価値がある」
と思われているように、一般素人イケメンは尊い。
イケメンが自撮りをアップすると、たくさんの女子垢が
「ありがとうございます!」
「目の保養になります😂」
と感謝のリプライを飛ばし、おっさんの練りに練ったツイートの3倍のファボがつくのを見るにつれて、イケメンには特別な価値があることを知った。
さて、今日はイケメンの自撮りにツイ女が群がる現象から
「ネットに自撮りをアップする」
という行為を「高度な恋愛戦略」として考えてみたい。
(もちろん、自撮り写真をアップしているイケメンに僕のような下心というか、邪な心があるわけではないだろう。おそらく純粋なサービス精神なのだろう)
ひと昔前。
2000年代前半のインターネットは「怖いところ」であった。
一度ネットに写真をアップすると出会い系サイトで悪用され、匿名掲示板で叩かれる、というような、強者だけが生き残る北斗の拳の世界のようなイメージがあった。
それからSNSが流行り、Facebookが日本に浸透し、カジュアルな出会い系の登場やインスタブームにより、「ネットに写真を上げること」はごくごく当たり前になった。
今では「ネットに全く自分の写真が存在しない」というデスノートのLのような人は少数派だろう。
もはや、ネットに写真を上げることは特別な行為ではなくなったのである。
***
本屋にはたくさんのモテテクニック本が溢れていて、ネットではたくさんの論者が恋愛を語っている。
様々なテクニックが溢れているが、モテ理論が究極的に行き着くのは
・どんな鉄砲も数撃ちゃ当たる
・蓼食う虫も好き好き
・人の好みは十人十色、百人百様
という、身も蓋もない真実である。
にも関わらず、世の中の恋愛は以下の図のように、1つ1つの恋愛が直列に進んでいる。
一つ一つの恋愛を丁寧に進めていくやり方は倫理的にも正しいし、僕はここで声を大きくして
「複数の相手を並列に転がすのだ!執着の分散だ!仮氏を作れ!」
というつもりはない。
そういうことをすると周りからは白い目で見られるし、相手からの信頼を失う可能性もある。
また複数を相手にすることで、時間も金も体力も消耗してしまうだろう。
自分の利益を最大化することが常に正しいとは限らないのである。
異性へのアプローチについて考えてみよう。
並列恋愛を封印するとなると、異性へのアプローチは基本、一人一人と面接し、結果を受けて、次の面接に進む、という形が基本となる。
「どうすか?」
「いいね」
「どうすか?」
「NO!」
みたいなイメージである。
***
そんなことを考えながらツイッターをブラブラと徘徊していたら、イケメンの自撮りが流れてきた。
そして、そのイケメンの自撮りにものすごくたくさんの女子が
「ありがとうございます!」
とお礼をしていたのだ。
その光景はまるで、我々おっさんが、女子の自撮りに敬礼する姿のようであった。
そんなツイ女総動員の敬礼騒ぎを見て、
「インターネットに自分の写真をアップする」
という行為は、ある意味で素晴らしいモテテクニックなのではないかと思い至ったのである。
繰り返しになるが、突き詰めると異性へのアプローチは基本、面接して「俺、どうすか?」の繰り返しである。
採用されたら、そこから交際が始まる。
が、僕達の身体は一つしか無いので、面接する機会は限られてくる。
インターネットを使うとどうなるだろう?
間接的にではあるが、複数の人に同時にアプローチを仕掛けることができるのである。
これを恋のブロードキャストと言う。
自分の写真と人柄をインターネットに置くことで、潜在的な顧客層に同時多発的にアプローチすることができる。
しかも、
「ありがとうございます!」
と反応してくれる人は既に自分に興味を持ってくれている人なので、前向きな関係に進む可能性は高い。
こんなことを考えながら、イケメンの自撮りアップ作戦は素晴らしいモテ戦略なのではないか、と思い至った。
インターネット上でレバレッジを効かせることで、イケメンは活躍の場を増やし、たくさんの女の子を幸せにするだろう。
イケメンにとっても、女の子にとっても、ウォッチャーにとっても幸せな、三方良しの作戦が「イケメン自撮りアップ」作戦なのである。
そんな素晴らしい自撮り作戦だが、自撮りさえ上げれば全てうまくいく、というわけでもない。
インターネットには人の悪意も増幅させてしまうので、自分に自信の無い人には不向きだ。
不細工が自撮りをアップしてしまうと、不特定多数のバッシングに晒され、心が折れてしまうだろう。
たとえばこんな感じだ。
これは辛い。
数撃ちゃ当たるの法則から誰かの心にヒットする可能性もあるが、その前に心が折れてしまうだろう。
インターネットは持てる者に優しく、持たざる者に厳しいのである。
とはいえ、性欲強太郎さんのように、漫画というコンテンツで勝負して大人気となったアカウントも存在するので、やはり
ネット上で不特定多数にアプローチする
作戦はたとえ顔がわからないような場合でも有効なのだろう。
というわけで、イケメンは遠慮することなくどんどん自撮りをアップするべきだ。
顔を出さない人も、アイコンはできるだけイケメンにしておくといいだろう。
老将アイコンはマジでモテない、ということだけは強調しておきたい。
個人的にはとても気に入ってはいるのだが。