「コミュニケーション能力を身につける」とはどういうことか



「コミュニケーション能力は学校に行かなくても身につけられる」というツイートが一部の界隈で話題になっていたようです。

コミュニケーション能力は学校に通わなくても身につくかもしれませんが、学校に行った方が身につきやすいです。
学校の中でできる色々なパターンの人間関係の中で、コミュニケーションの訓練ができるからです。

小学校、中学校、高校に行かなくてもコミュニケーション能力を訓練する場は作ることができるかもしれませんが、学校に通う場合に比べて非常に限られたものとなるでしょう。

だからといって、学校に通えば全ての人にコミュニケーション能力が身につくわけでもなく、まともなコミュニケーション能力が全く身につかない人もいます。

イケハヤさんが「学校は社畜のコミュニケーション」と煽っていることには特に深い意味がなさそうなので触れないとして、そもそも「コミュニケーション能力を身につける」とはどういうことでしょうか?

一昔前の就職活動では、

「学生に求めるのはコミュニケーション能力である」

などとも言われていました。

しかし、会社の人間で「そもそもコミュニケーション能力があるとはどういう状態か」を明確に定義できている人はほとんどいません。

「なんとなく心地よい会話ができるかどうか」でコミュニケーション能力があるかないかを測る人もいれば、「論理的に受け答えができるかどうか」をコミュニケーション能力とする人もいます。

会社だと上司に適切なタイミングで報告・連絡・相談ができるかどうかがコミュニケーション能力と判断されることもあります。

このフワッとした「コミュニケーション能力」を分解するとどうなるのでしょうか。
「コミュニケーション能力がある」とは、何ができて、どういう状態を指すのでしょうか。

相手の心情を察する想像力

一番に来るのは「想像力」でしょう。

自分が発する言葉、表情、態度、空気...
相手の発する言葉、表情、態度、雰囲気...

目に映り、耳に入り、手で触れた情報から相手の心情を察する能力がコミュニケーション能力その1です。

元々モテなかった人のほとんどは「相手の心情を想像する」能力が著しく欠けています。
同じように、元々モテまくっていた人も欠けていることが多いです。
モテまくっていた人は、相手の心情を想像しなくても、相手が勝手に自分に合わせてくれたためです。

相手の心情を察する能力が完全に欠けている人や、察する能力が高いにも関わらず、意図して相手が不快になる行動を取る人を「サイコパス」と呼びます。

本を読んだりネットで情報を集めたとしても、この種の能力は身に付きません。
ネットの情報収集と、目の前の人間を観察する能力は全く別物だからです。

会話のシミュレーション能力

次に大事なのはシミュレーション能力です。
こんなことを言ったら相手はこう反応するだろうな...というのを脳内で高速にシミュレーションすることが求められます。

シミュレーションの精度は相手との相性にもよりますが、経験によってある程度は磨かれるものです。
シミュレーション能力の面白いのは、考えながらコミュニケーションを続けることで、精度を改善できる点です。

「こうやったらこう反応するだろうな」を予め考え、実行し、反応からフィードバックを得ること。

これは異性とのコミュニケーションを磨く上での基本となります。
振られてばかりの僕が語れることは少ないですが、お笑いに鉄板のパターンがあるように、異性とのコミュニケーションも「多くの人が好意的な反応を示すパターン」のようなものがあります。

それらをシミュレーションしながら身につけていくのが女修行の基本となりますが、この記事は女修行が本題ではないので深入りしません。

ちなみにシミュレーションを繰り返し、どんなに改善を重ねても、万人に通じるコミュニケーション手法など見つからないのが奥が深いところです。「万能の口説き文句はない」ということですね。

感情を的確に伝える語彙力

僕たちの感情は言葉に乗って相手に届きます。
言葉を大切にしましょう。

頭の中でモヤっとした感情のイメージが浮かんだとしても、言葉を持たなければ相手に伝えることはできません。
僕たちが自分たちの想いを表現するためには語彙が必要です。

本を読み、文を書き、言葉をたくさん発し続け、自分の想いを的確に伝えられるようにしなければいけません。
言葉の使い方を間違えると、伝えたいことが伝えたい形で伝わりません。

語彙を増やし、言葉の使い方を学びましょう。
ちなみに自分も語彙力不足を痛感しており、空いた時間で語彙力系の本を読んだり、小説を写経しながら勉強しています。

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状況に合わせるチューニング力

僕たち状況に合わせてコミュニケーションスタイルを調整しなければいけません。
目の前で話しているのがイジられて喜ぶタイプ女の子だったら積極的にツッコミを入れなければいけないし、チヤホヤされたがっている上司だったらひたすらに持ち上げて褒めどころを探さなければいけません。

自分のスタイルが「何か間違ってる」と思ったときはスタイルを調整し、その場に応じて自分の話し方も変えていくチューニング力が必要とされます。

言うまでもなくこれは高度な技術です。

見た目の印象を良くする

話し手が聞き手に与える印象は言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%と言われています。

メラビアンの法則です。

「何を話すかよりも、誰がどのように話すかが大事」ということでもありますが、これは僕自身がこれまでの合コンで何度も経験してきたことです。

僕が話した100の言葉よりも、イケメンが発した「可愛いね」の一言の方が女の心に響いていました。

oreno-yuigon.hatenablog.com

共通の話題力

僕の経験上、どんなに頑張ってコミュニケーションを図ろうと思っても、全くバックグラウンドが違う人とのコミュニケーションは心から楽しむことはできません。

わかりづらい表現になりますが、「自分が生きてきた道幅の左右30%程度」が会話を続けることが可能な範囲でしょう。
共通の話題が一つもない人と会話を続けるのはなかなか難しいものがあります。

「仕事、恋愛、お金、週末の遊び」など、万人に共通する話題から徐々に会話を広げていくのが定石ですが、あまりにバックグラウンドが違う場合、口説く目的もない同性だと会話を続けるモチベーションがなくなってしまうかもしれません。

逆に共通の関心がある相手とは、その話題を深めていくだけで盛り上がることができます。
共通の話題がある人とは良い関係を築きやすいのです。

自分の立ち位置を読む

どんなに卓越したコミュニケーション力を発揮しようと、相手が心を開いていない場合は全て無効化されます。
自分の立ち位置によってコミュニケーションが“ハマる”場合と“ハマらない”場合があるということです。

会社でサボりまくって、みんなから白い目で見られている人が会議で突然くわっと目を見開き、もっともらしいことを言っても誰からも見向きもされないでしょう。
逆にどんなにつまらない冗談でも、偉い人が発したらみんな笑ってくれるものです。

残念ながらコミュニケーションは「何を言うか」以上に、「誰が言うか」が重視されることが多いのです。

自分の立ち位置を読んで、負け戦では「黙して語らず」「笑顔でやり過ごす」などの“逃げの戦略”を講じることも大事です。
どんなにコミュ力を鍛えても自分の立ち位置が不利だと勝てないのです。

自分に全く興味がない女の子をどんなに口説いても落とすことができないのと同じです。

空気を読む

空気を読む力とは、周りの人が共有している感情を察する能力です。
“空気”はその場にいる多数派が作ります。

どんな空気になっているかを周りの声のトーンや表情から察し、その空気に応じた適切な振る舞いを選択するのが「空気を読む能力」です。

演技力

口説くときは情熱的に、上司に報告するときは真剣に、友達と話すときは明るく、悲しいときは泣きそうに、感情を表情に乗せて表現するのもコミュニケーション能力の一つです。

会社組織では特に重視される能力でしょう。
面従腹背というか、内心「なんだこいつ」と思いながらも深刻な顔をして服従する姿勢を見せる演技力は、力のない若手時代に特に必要となります。

女の子を口説くときも、時に雄弁に語り、時に下心を隠し、時に真剣な顔で迫る演技力が求められます。
我々は俳優で、隣にいる女の子は女優です。

彼女が何人いたとしても、目の前の子は初めて恋したかのように口説きましょう。

本音と建前

上の演技力と同じですが、なんでも本音をズバズバと話して問題ないのは一部の“既に勝っている人”だけです。
ツイッターで歯に衣着せぬ物言いで手当たり次第色々な人を論破する強者を見るのは気持ちがいいですが、普通の人がこれをやると恨みを買って損することが多いです。

本音と建前を使い分ける能力も一つのコミュニケーション能力です。
これは冒頭で書いてあるように、社畜的ですね。

僕が知っている大きくて古い会社組織の中は建前で溢れていました。
誰も彼もが内に思いを秘めながら、誰もそれをぶつけずに大人に振る舞っているように見えました。

建前の世界で生きるのは気持ち悪いですが、そこから抜け出すには力が必要です。
具体的にはお金を稼ぐ能力が必要です。

欲しいものを先読みする

相手が求めているものを予想し、先回りして与えるのもコミュニケーションの一つです。
上司が求めている成果物を頼まれる前に用意しておくとか、聞かれる前に報告するのも先読み力です。

「この人はこういうことをしてほしいだろうな」と気付く力はあらゆる場面で重要でしょう。
ちなみに先読み力に優れ、上司である織田信長の期待を超える成果を出し続けて出世したのが豊臣秀吉です。


ざっと思いつく限り、「コミュニケーション能力」を構成する要素をあげてみました。
学校に行かなくてもコミュニケーション能力を鍛えることはできるかもしれませんが、組織に属することなくこれらの能力を身につけるのは難しいと思います。

コミュニケーションは実践によって鍛えられるものだからです。