なぜ若者は「 #警察挑発動画 」をTikTokに上げるのか



ニュースを見ていたら「#警察挑発動画」が話題になっていた。
2010年頃はコンビニの冷蔵庫に入ったり、吉野家の牛肉を粗末に扱う様子をツイッターに上げた若者が炎上し、彼らは

「バカッター」

と呼ばれていた。

2019年のバカッターは舞台をTikTokに移し、今度は「警察を挑発する」という謎の行動を繰り返しているらしい。

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警察車両を挑発するティックトッカー

ニュースによると、警視庁の前でダンスしたり、警察車両の前でダンスしたり、コンビニにいる警察の前でダンスしたり、とにかく警察を見つけたら目の前でダンスすることを生業としているようだ。

ニュースではたびたび、

「なぜ彼らは警察を挑発するのか」

と考察していたが、腑に落ちない回答ばかりだったので僕も彼らの動機を考えてみる。

権威をおちょくることで相対的に自分の立ち位置を上げる

警察を挑発する若者を見て、僕は自分の過去を思い出した。

DQNの巣窟・田舎の公立中学校にいた「教師を挑発するなんちゃってヤンキー」である。

何を隠そう僕だ。

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学校のヤンキーヒエラルキーでは下層。
真面目で優しい生徒に偉そうにして、自分より強いヤンキーにはひれ伏す、人間の醜さを凝縮したような中学生であった。

愚かな中学生は、教師に反抗する。
授業中に教師に口答えし、授業を聞かず、教室から出ていく。

これは全てパフォーマンスだ。

心の中では「教師が自分をボコボコにすることはない」と安心していた。
だからこそ、本当にヤバい体育教師を挑発するような真似はしなかった。

「教師に反抗する」パフォーマンスの先に求めたのは、仲間内でのヒエラルキーの向上である。

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教師に反抗する目的


教師という「権威の象徴」に屈しない姿勢を見せて目立つことで、仲間に認められ、ヒエラルキーの上に行こうとしたのだ。

遠回しな承認欲求とも言える。

教師に反抗する中学生は、仲間内の、自分より強い生徒には逆らわない。
逆らうと自分の立場が危うくなることを知っているからだ。

警察を挑発する若者も同じようなものだろう。
自分たちのヒエラルキーの外にある「反撃してこない権威」を攻撃し、仲間に認められ、自分の立ち位置を向上させようとしていたのだ。

全ては目立つため、そしてモテるため

ヒエラルキーの向上以外にも権威をおちょくる効果はある。
「警察」という国家権力を相手にして挑発すれば、目立つことができるのだ。

目立つって...何を当たり前のことを言っているのだ...と笑われるかもしれないが、中高生にとって「目立つこと」はとても重要な問題だ。

目立って、注目されて、話題にされたい。
みんなに自分のことを知ってほしい。

なぜ?

目立ったほうが、モテる気がするから。

「モテる」なんて低俗な欲求に突き動かされるなんて馬鹿なの?と大人は考えてしまいがちだが、中高生男子の「モテたい欲求」の強さを侮ってはいけない。

大人はもう忘れてるかもしれないが、思春期は四六時中女のことばかり考えていた男がほとんどのはずだ。

悪目立ちして注目を集めるのは、彼らにとっての繁殖戦略なのだ。

元々イケメンで、周りからチヤホヤされている青年であれば、わざわざ警察を挑発しない。
そんな無駄なリスクを背負わなくても、欲しいものはもう持ってる。

目立つグループ内にいるがブサイクで、特にモテることもなく悶々としている青年は、起死回生の手段として国家権力に喧嘩を売る。
周りの奴らよりも目立つために。注目を集めるために。そして全てはモテるために。

彼らにしてみれば、学校で何か成果を残してみんなにチヤホヤされるよりも、時間をかけて修行して強くなるよりも、国家権力を挑発した方が手っ取り早く目立てるのだ。

周りの生徒も馬鹿ではないので、警察を挑発する行為の薄っぺらさは見抜いている。
見抜いていながら、アホをおだて、乗せて、挑発を止めないのは罪深い。

「モテたい」に漂うチープな香り

なぜ若い男が警察を挑発するのか色々と考察してきたが、

  • 目立つ
  • 承認欲求を満たす
  • ヒエラルキーの向上を目指す

などの動機は「モテたい」=「女を手に入れたい」という欲求につながっていると考えた。

ここで「モテるため」と書いた瞬間、なんだか力が抜けるくらい主張がお粗末になった気がした。

「全てはモテるため」

なんてチープな響きなのだろう。

「お前のそれ、モテるためだろう?」なんて言った瞬間、安っぽい知ったかぶり博士感が出てしまう。

しかしだ。

「モテるため」というのは、実は男の様々な行動の隠された動機になっている。

良い服を着たり、金持ちに見せたり、いい車に乗ったり、SNSで成功してそうに見せたりするのは、みんな絶対に言わないけど、女の子に「すごい!」とチヤホヤされたいみたいな、下卑た動機がある。

我々は自らが望まなくても、「モテたい」と切に願ってきた先祖の血を引いているのだ。
この「モテたい」モチベーションが暴走すると頭のおかしいバカッターを生み出してしまう。

我々は「モテたい欲求」を昇華し、世のため人のために何かを生み出すモチベーションにつなげるべきだ。

「モテたい」から目をそらすでもなく、馬鹿にするでもなく、人を幸せにするためのエネルギーに変えよう。

もしも両津勘吉が挑発されたら

テレビによると、警察内では「ティックトッカーの挑発に乗るな」という司令が徹底されているそうだ。

目の前で

「カモンベイビーアメリカ!」

などと踊られ、挑発された警察の中には、殴りたくなった人もいることだろう。
僕ならこっそり殴ってしまうかもしれない。

動画を撮られているのだから、殴ったら全世界に「暴力警官」として拡散されてしまう。

挑発された警官達はプルプルと拳を握りながら、怒りを抑えていたのだろうか。

ジャンプの名作に『こち亀』という漫画がある。
『こち亀』主人公の両津勘吉は破天荒な警察官だった。

テレビで挑発される警察を見たとき、僕は両津のことを思い出した。

「もし両津が挑発されたらどうしただろう?」

考えるまでもない。

発砲していたはずだ。

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しかし残念ながら、現実世界では誰も両津にはなれない。
発砲してしまうと始末書では済まないし、アホを殴ると世界中に動画が拡散されてしまう。

せめて一緒にダンスして、「ダンス対決で小僧を倒す」みたいな復習ができればいいのだが、勤務中にダンスバトルするわけにもいかないだろう。

警察官の皆様は、どうか挑発に乗らず、敵を拳で打ちのめすのでもなく、法に則り法を用いて敵を倒してほしい。

どうしてもイライラしたときは、こち亀を読んで深呼吸しよう。

こち亀は本当に良い漫画ですよ。

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