『小さな会社★儲けのルール』という本が面白かったので紹介します。
この本はランチェスター法則を元に、中小企業や独立直後の自営業の人がどうやってビジネスを成功させるかを説明している本です。
「ランチェスター戦略は弱者のための戦略である」
と聞くと、近年ブームとなっている副業を手がけている人にはハッとするものなのではないでしょうか。
僕も含め、個人で戦う発信者の多くは弱者だからです。
大きな資本を持つ大企業は戦力を一気に投入して、大きな市場を一気に抑えることができます。
以前問題となったDeNAの「ウェルク」というサイトは、大量のライターを雇い、大量に記事を投入しSEOをハックすることで、健康に関する検索キーワードのほとんどを独占するに至っていました。
スモールビジネスを営む弱者はこのような戦略は取れません。
資本で勝る大手企業にガチンコで勝負しても必ず負けてしまうのです。
では資金もない、人もいない弱者が勝つにはどうしたらいいのか?
そんな持たざる「弱者のための戦略」を紹介しているのが『小さな会社★儲けのルール』です。
著者が地方の中小企業を相手にしていることもあり、紹介されている事例はリアルビジネスばかりです。
ネットの世界ばかりを見てきた自分にはそれが逆に新鮮で、参考になりました。
- 作者: 竹田 陽一,栢野 克己
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2016/07/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ランチェスター法則とは
ランチェスター法則とは、戦いの法則です。
第一法則は
- 攻撃力 = 兵力数 × 武器性能
となります。
第二法則は
- 攻撃力 = 兵力数 × 武器性能^2
となっています。
※「^2」は「2乗」の意味です。
ランチェスター第一法則は「原始的な戦い」に当てはまります。
僕の田舎の中学では、年に一度は中学間で抗争が発生していました。
各学校の不良が空き地に集まって、中学同士で戦争するわけです。
漢の勝負なので武器は禁止です。
つまり原始的な戦闘力での戦争となります。
ランチェスター第一法則の戦いなのです。
その公式は、
「攻撃力 = 兵力数 × 武器性能」
となっています。
A中学の不良50人 vs B中学の不良30人
で戦争した場合はA中学が勝利しますが、戦死者の数は両校で同じ10人となる、ということです。
歴史の事例を見てみましょう。
明智光秀は天王山で羽柴秀吉と決戦しました。
秀吉軍35,000人に対して、光秀軍は16,000人。
結果は皆さんご存知の通り、羽柴秀吉の勝利でした。
しかし戦死者の数は両者同じ数で、3,000人でした。
兵数が2倍いても、損害は1対1になるのです。
ランチェスター第二法則
双方の武器性能が同じで、射程距離が長い兵器を使い、離れて戦う場合は双方の力関係は二乗比になります。
これがランチェスタ第二法則です。
「攻撃力 = 兵力数 × 武器性能^2」
で表現されてましたね。
なぜ「二乗になるのか」については以下の記事がわかりやすいです。
仮に、10隻のフランス軍と、5隻のイギリス軍が戦ったとします。
一隻が一発ずつ砲弾を撃つとすると、フランス軍は10発の弾が撃てるのに対し、イギリス軍は5発の弾しか撃てません。
それだけではありません。
フランス軍は、5発の弾を10隻の戦艦で受ければ済むのですが、
イギリス軍は、10発の弾を5隻の戦艦で受けなければなりません。
1隻あたり受ける弾の数は、
フランス軍: 5/10 = 1/2
イギリス軍: 10/5 = 2
つまり、攻撃力が数に比例し、防御力も数に比例するんです。
だから、攻撃力x防御力 = 数の2乗 。
歴史の事例を見てみましょう。
太平洋戦争ではアメリカ軍は空中戦でも地上戦でも、日本軍の3倍〜4倍の兵力で攻撃してきました。
ランチェスター第二法則に当てはめると、損害の差は3倍では1対9、4倍では1対16になります。
実際、空中戦でも地上戦でも戦死者数はアメリカ軍1に対して日本軍は10と大きな差となり、日本軍の被害はアメリカに比べて非常に大きくなっていました。
ランチェスター法則から考えると、資本の少ない中小企業や個人事業主は、ランチェスター第二法則を避けるため、
- 一騎打ち戦がしやすい商品を選ぶ
- 接近戦や一騎打ち戦がしやすい営業方法を決める
- そのためには接近戦や一騎打ち戦がしやすい特別な営業エリアを選ぶ
ことが推奨されています。
具体的には、以下のような戦略を取ることです。
- 弱者は先発会社と差別化し、同じやり方をしない
- 弱者は小規模1位主義、部分1位主義を狙え
- 弱者は強い競争相手がいる業界には決して参入しない
- 弱者は戦わずして勝ち、勝ちやすきに勝つことを狙う
- 弱者は対象を細分化する
- 弱者は目標を得意なもの一つに絞る
- 弱者は軽装備で資金の固定化を防ぐ
- 弱者は目標に対して持てる力のすべてを集中する
- 弱者は競争相手に知られないよう、静かに行動する
ではランチェスターの法則をスモールビジネスに活かすにはどうしたらいいでしょうか。
戦力を分散させない
『小さな会社★儲けのルール』で紹介されている成功事例は全て
- 売る商品
- 売る相手
- 売る地域
を狭く絞っています。
大きな市場を相手にしても競争相手に勝てないからです。
下町の向上がロケットを開発しても大企業には勝てません。
ロケットの部品のごく一部「バルブ」に特化して戦うのが中小企業の戦い方です。
ランチェスター法則に従えば、中途半端な労働力を分散して色んなものに投入しても、結局何も得るものがありません。
戦力の逐次投入は愚策なのです。
何かをやるときは、一つのものに一気に全戦力を投入するのが吉です。
ブログをやるならまずブログの更新に全力を尽くす。
不動産をやるなら不動産を全力で研究する。
あれもこれも、と手を出してどれも中途半端になってしまっては、競合には勝てません。
これは「個人の労働価値」を上げる場合にも言えます。
僕はどちらかというと「あれもやりたい、これもやりたい」と落ち着かないタイプの人間です。
昨年はチマチマとプログラミングの勉強をしていたのですが、色んな言語に手を出してみてはどれも身にならずに中途半端になって、結局自分の市場価値の向上にはつながりませんでした。
勉強するなら「今、自分が必要なもの」に戦力を一気に投入するのが良いです。
大手が狙う分野を攻めない
ブログやアフィリエイトではよく
「ビッグキーワードを狙え」
と言われます。
月々の検索回数が多いキーワードで上位表示されるようなテーマで記事を書け、ということです。
しかし、たとえば「クレジットカード」などの儲かりそうで検索回数も多いキーワードは資金力のある強力な競合がひしめき合っているため、弱小ブロガーが突然参入しても弾き返されてしまいます。
※「クレジットカードの読み物」の運営者は怪物or天才なので例外
あまりにも検索需要がない分野を攻めても何も流入がなく困ってしまいますが、
ビッグキーワードを狙うよりは「3語組み合わせた複合キーワードを狙う」とか、「ニッチな分野の特化サイトを全力で作る」のが弱者の戦略としては正しいのです。
ちなみに約4年前に始めたこのブログ「俺の遺言を聴いてほしい」はそういう戦略もなしに始めた雑記ブログであるため、「読んでくれた人にファンになってもらう」戦略を取るしかありません。
リアルビジネスとネットをつなげる
動画やブログはリアルでビジネスを持ってる人がやると強い。
— ヒデヨシ (@cook_hideyoshi) 2019年1月3日
自動旋盤のメンテナンス業で独立した鈴木氏は独立直後は売上ゼロだった。
しかし毎日3回YouTubeに動画をアップした結果、「都道府県名 自動旋盤」の検索結果を制覇。6年目で売上が3億円に。
SEOをリアルビジネスの広告に使う好例ですね。 pic.twitter.com/cyF7nHXPf8
ブロガーやYoutubeで生計を立てている人は、主に広告から収益を得ています。
サイトに貼っているGoogleAdSenseだったり、アフィリエイトによる物販からの収入で暮らしているわけです。
広告業を極めるのも良いのですが、ブログの広告を「他人の商品を売るために使う」のではなく、「自分の商品を売るために使う」と収益が跳ね上がります。
中抜きされずに自分の商品を直接販売できるからです。
いま流行っている「note」はコンテンツを商品として販売しているので、「自分の商品を売る」に入るかもしれませんが、どうせならネットをリアルでのビジネスにつなげられたら、経営の幅が広がるはずです。
たとえば、料理教室をやっている主婦が料理のレシピサイトやレシピ動画をupして、そのサイトに自分の料理教室のリンクを貼るとか。
ピアノやパソコン教室、セミナービジネスでも同じことができますね。
自分が働くのが嫌な場合は、検索から集めた見込み客を不動産に流したり、自分の商材に流したりもできるかもしれません。
僕も今後スモールビジネスを手がけるときは、「リアルとネットをどうやってつなぐか」を考えていく予定です。
リアルビジネスの良いところは、ネットに比べて不確定要素が少なく、安定していることだと思っています。
もちろんビジネスに「常に安定している」ということはないのですが、ネットの不安定さはリアルの比ではありません。
Googleの検索アルゴリズムが変わっただけでアクセスが激減してしまうのがネットビジネスなので、生活の糧にするにはちょっと安定感が足りませんよね。
成功した人は皆、ハードワーク
世界の偉人伝などを読んで概算すると、エジソンは年間6500時間で、それを40年間。
キューリー夫人は5000時間を35年はやってますね。
本田宗一郎さんは一代で世界のホンダを作った人ですが、あの方も5500時間を35年やってます。『小さな会社★儲けのルール』275ページ
本で紹介されている人物の労働時間を表にするとこうなります。
人物 | 年間労働時間 | 1日あたり労働時間 |
---|---|---|
エジソン | 6500時間 | 17.8時間 |
キュリー夫人 | 5000時間 | 13.6時間 |
本田宗一郎 | 5500時間 | 15時間 |
稲盛和夫 | 5000時間 | 13.6時間 |
藤田晋 | 5735時間 | 15.7時間 |
河原成美 | 5000時間 | 13.6時間 |
落合陽一 | 6570時間 | 18時間 |
※河原成美さんは博多一風堂社長。落合陽一さんは個人的に気になる人
一代で何事かを成す人はみんなハードワークです。
ハードワークができることを逆から考えると、みんな頑丈だったということです。
そういう意味で、何かを成す上で「体力」はとても重要な要素なのでしょう。
本の中では、
「凡人は働く時間が年間3200時間以上でないとダメです。
独立する場合、最初の5年間は年間3700時間以上必要です」
と書かれています。
年間3700時間は5日間休むと仮定して360日で割ると、一日10時間ですね。
独立して成功するためには、難関国家資格に合格するレベルの努力を5年以上続けなければいけないのが現実なのかもしれません。
また、何か専門性を身に付けたいときは、何か一つの狭い分野に絞って時間を思い切り投入することが推奨されています。
プログラミングならJavaにもRubyにもPythonにも機械学習にもSwiftにも手を出すのではなく、どれか一つの専門化になること。
語学なら英語も中国語もドイツ語も、とやるのではなく、まず英語に思い切り時間を投入するのが大事なのではないでしょうか。
戦力を逐次投入することなく、持てる限りの目一杯の時間を狭い分野に投入すること。
それこそが、ランチェスターの法則に則った、弱い個人の正しい戦い方なのです。