会社員の「学び直し」が人生100年時代の有効なキャリア戦略になる

2019年2月25日の日経新聞朝刊29面に仲條亮子(なかじょう あやこ)さんという女性のキャリア論が掲載されていた。

米グーグル傘下のYouTube日本代表を勤める仲條さんのキャリアはテレビ局から始まった。

1967年生まれの仲條亮子さんは立教女学院短期大学を卒業後、テレビ局に入社。
その後フリーになり、CNNのキャスターをしながら早稲田大学に入学し、国際政治を学んだ。

キャリアの転機となったのは1997年、ブルームバーグ情報テレビジョンの日本テレビ局でトップに就任したことだ。

ブルームバーグ社本部の営業部署に異動した後、会社から資金の援助を受け、働きつつ米シカゴ大学で経営学修士を取得した。

「技術や社会情勢が激変するなか、他に応用が利く『知識の型』を持つのが必要だと痛感した」

として、十数年勤めたブルームバーグを辞めた後は米ハーバードビジネススクールののアドバンスド・マネジメント・プログラムで二ヶ月間学び、ネットワークが一気に広がったという。

その後、2013年にグーグルで広告の仕事を始めた後、2017年にYouTube日本法人の日本代表となった。


驚くべき点は、これらの「学び直し戦略」を仲條さんはほぼ全て「働きながら」こなしてきたことだ。
それに加えて子育てまでこなしているのだから、超人という他ない。

正直に言うと、はじめは

「学び直しが人生100年時代の有効な戦略になる」

というニュアンスで記事を書こうとしていたのだが、仲條さんの経歴を調べていくにつれ、この人は「学び直し」というレベルで語るには甘すぎるくらい、とんでもない人だということがわかってきた。

とはいえ、仕事をしながら数年に一度、大学に戻って学び直すことを繰り返してきたことが彼女の視野を広げたことも間違いないだろう。

社会人の学び直し戦略

仲條さんが超人的な行動力で仕事を続けながら大学で学び直しを行ってきたことはこれまでに述べてきた。

しかし仲條さんの超人的な行動力は誰にでも真似できるわけではないだろう。
少なくとも僕には無理だ。

仲條さんレベルになると「学び直し」が彼女の道を拓いたのか、根性が道を拓いたのか、その両方なのかはもはやよくわからないのだが、
我々一般の会社員にとっては

「学び直して新たな専門性を身に付ける」→「新たなチャレンジにつなげる」

という戦略はかなり有効であると考えている。


「学び直し」が有効であると感じる理由は3つある。

ひとつ目は、大学で専門知識を学習した期間に比べて社会人生活は圧倒的に長いということ。

大学時代はそもそもビジネス経験がないため、「どんな専門性が必要か」などと意識することもない。
そのため、「何を学ばなければいけないか」という目的意識が薄くなってしまいがちだ。

また大学で何かを学び専門性を身に付けたとしても、10年後にはさすがにその知識は陳腐化する。
数学などの基礎となる部分は陳腐化しないとしても、10年前の先進的な技術は今の時代遅れの遺物になりがちだ。

なので、10年会社で働いて、一度必要な知識を学び直して、そこからまた新たなキャリアを築いていいく、という生き方もアリなのではないかと思える。

というのも、働かなければならない期間は延びていて、仕事に求められる知識も高度化しているからだ。


ふたつ目の理由は、会社で得られる知識や経験値が逓減していくことだ。

何かの能力を身に付ける上で、最も有効なのは「働きながら学ぶこと」なのは経験上、間違いない。

「勉強のための勉強」みたいになるとモチベーションも上がらないし、ビジネスに直結しない場合もある。
なので、会社で一生懸命働くことが能力の開発につながるのであれば、それは素晴らしいことだ。

一方で、会社に長く勤めていると、「業務から新しく学べることが少なくなる」という現象も起こりがちだ。そういう会社の方が多いだろう。

仕事を続けているうちに作業に習熟し、慣れて、それほど負荷をかけずに同じアウトプットを出せるようになってくる。
それはそれで早く帰れたりしていいこともたくさんあるが、学びや得られる経験値が少ないと、市場価値が上がらないのが問題だ。

会社が社員の能力の開発に気を使ってくれる面は多々あるが、会社は社員一人ひとりのために存在しているわけではなく、キャリアが個人に最適化されるとは限らない。
なので自ら考えて、必要な専門知識を身に付けようと動いていく必要があるのだ。


みっつ目の理由は、会社で得られる知識に汎用性があるとは限らないことだ。

世の中の変化は早く、特にテクノロジーに関しては、10年前の最先端が今の時代遅れになるようなことは多々起こる。

一方で、会社組織で作ってきたものを時代に合わせて変えていくのは難しい。
古いルールは呪いのように温存され、一度できた「勝ちパターン」は急には変えられない。

また世の中には「学ばない人」「新しいことを否定したい人」はどこにでもいるため、新しいものを組織に取り入れるのが困難なこともある。

日本企業の場合は特に顕著だと聞くが、謎の社内ルールばかりに習熟し、社外に持ち出せないようなスキルばかりに詳しくなってしまうこともあるだろう。

そうやって何か閉塞感を感じたときに、「学び直し」は有効なのではないだろうか。

5年後の自分に必要な能力を想像し、あえて会社の外で学ぶのは、視野を広げる上で非常に有効だろうと思う。
仲條さんのように働きながら学ぶのが理想だが、一度会社を離れて学ぶのも全然ありだと思う。

どうせ定年は延びるし、年金はもらえないし、会社員やるなら70歳まで働かなければいけないのだ。いや、75歳かな。

40代で一度大学に戻って専門性を磨いても、まだキャリアの中間地点なのである。

...そう考えると、いつまでもがむしゃらに学び、闘い続けなければいけない「会社員」という生き方そのものがもはや最適ではない気がしてならないのだが...。

『金持ち父さん』でいうEmployeeからBusiness ownerやInvestorに移っていく戦略を考える必要もあるのかもしれない。


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