えらいてんちょうさんの『しょぼい起業で生きていく』読んだ感想

2019年1月初旬にツイッターで脱社畜サロンオーナーに経歴詐称疑惑をぶつけ、大きな話題を呼んでいたのが「えらいてんちょう」こと「えらてん」さんです。

実はこれまでえらてんさんの活動をあまり存じ上げてなかったのですが、今回の脱社畜戦争の鮮やかな喧嘩の手腕を見て、早速著作を買ってみました。

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『しょぼい起業で生きていく』の最後に、はてなブログで有名になった借金玉さんとの対談が掲載されているのですが、そこで借金玉さんは

「いちばんの起業の極意は死なないこと」

とおっしゃっています。

「しょぼい起業」の極意はここにあると思います。


しょぼい起業は大げさな事業計画を立てることなどせず、一攫千金を狙うわけでもなく、まずは「生活の資本化」を目指します。


たとえば、毎日食べる食事を多めに作って余った分を売るとか、普段埼玉の実家から通学してるなら、埼玉で取った野菜を東京で売る、みたいな発想です。


えらてんさんはリサイクルショップを経営していました。

家を借りるつもりで店舗を開き、店に寝泊まりすれば、「生活する場所」をお金に換えることができます。

次に飲食店を開くときも、リサイクルショップに集まってきたものをそのまま使うことで、内装費のかなりの部分を抑えることができたそうです。


「しょぼい起業」とは、「自分の生活を自分の労働で満たして、余った分は売って資本化する」ということです。

こうすると、「家賃で破産する以外、事業が潰れることはない」とえらてんさんはおっしゃっています。


本の中盤からは、実際にえらてんさんがどのように事業を作り、人気のバーを作り上げていったかが紹介されています。


しょぼい起業で生きていく

しょぼい起業で生きていく

『メモの魔力』的に考えると、「しょぼい起業」を具体→抽象→転用で考えると、色々と応用が効くように感じました。

たとえば、「生活の資本化」について言うならば、毎日本をずっと読んでいる人は、

  • 読んだ本をYoutubeで紹介する
  • 読んだ本をブログで紹介する
  • 読んだ本をツイッターで紹介する
  • 本を元ネタにしてブログを書く
  • 自分で小説を書いてKindleで出版してみる

みたいに、自分の趣味をお金に換えることもできてしまうわけです。

新聞を取っている人は、新聞のネタからニュースのまとめサイトを作ってもいいわけで。

えらてんさんの場合は実ビジネス(インターネットではない方)の事例が多く紹介されていましたが、「ネットの発信」をうまく組み合わせることで、「生活の資本化」に加えて、「趣味の換金」もできるのではと思いました。

(ユーチューバーもそうですが、趣味を経費にできればお金が貯まりやすいんですよね)


大きく始めて一攫千金を狙うのではなく、小さくしょぼく始めて「まず死なない状態を作る」のが大事です。

会社に通いながらしょぼい起業にチャレンジしてもいいのです。

「会社に行かなくてもとりあえず生きていける」状態さえ作ることができれば、細々と生きていくことはできるわけで。

生きて色々と小さくチャレンジしていたら、1の力で始めたものが100に育つこともあるかもしれません。


「脱社畜」はちょっと前まで大きく取り上げられていましたが、脱社畜したい人ほど焦ることなく「しょぼい起業」メソッドで地に足を着けて、
働きながらでも「まず死なない状態」にまで持っていくのがいいんじゃないかな、と思いました。


本を読めばわかりますが、えらてんさんはツイッターやYoutubeでの過激な発言とは裏腹に、ものすごく実直な人です。

たとえば106ページで、お客さんを店に呼び込む方法について、こんなことが書かれています。

店の近所のおじさん達の行きつけのスナックにいるおじさんたちに頭を下げて、
「また遊びに来てくださいよー」
なんて言うと、今度はそのおじさんたちが、「こないだいい店見つけたんだよ、ちょっと行ってみようよ」なんて言ってくれたりするので、どんどんお客さんが増えていくことになります。

極端に言うと、自分がかいた汗のぶんだけ、自分が下げた頭のぶんだけ広告になるわけです。
つまり、広告宣伝費がないから開業できないというのは、とてもナンセンスです。
広告宣伝費は、あなたの足や愛想でまかなうものなのです。


この記述を見たら、えらてんさんとイケハヤさんがどうして対立するかがわかるでしょう。

根本的に価値観が合わない二人がネットの世界で鉢合うと、バトルが始まるに決まっているのです。

金がかからない娯楽はある

「しょぼい起業」なんてやってたら食っていく以上のことは何もできないじゃん?と言われることがあるそうです。

それに対して、えらてんさんは

「お金がないと暇をつぶせない人は発想が貧困だ」

と言います。

図書館には山ほど本があり、興味あるジャンルの本を一日一冊読んでも1年潰すことができます。

公営の博物館や美術館も山ほどあります。

パチンコで1000円スるのは一瞬でも、江戸東京博物館は600円で一日中過ごすことができます。

公営のジムやプールもあります。

インターネットで検索すれば、無料の娯楽はいくらでもあるのです。


...というえらてんさんの主張を読んで、僕は目が覚めるような思いでした。

お金のかかる娯楽ばかりに興味を持って、女の子にお酒を奢っては月末カードで破産しそうになり、いつも苦しい生活をしている自分がアホだと思いました。

公営のジムに行って、図書館を活用し、博物館を楽しみたいです。


「お金を使わずに人生をどうやって楽しむか」

という点に頭を使うことができれば、月々に生きていくのにかかるコストは劇的に減ります。


「無料の娯楽を有効活用する」は「しょぼい起業」の発想と非常に親和性が高く、娯楽も含めたコストを下げられるだけ下げることによって、「死ににくい状態」を作るのです。

これって、note書け〜!稼ぎまくれ〜!と主張する「脱社畜サロン」に比べてやり方はすごく地味ですが、「脱社畜」の根幹をなす考え方なんじゃないかな、と思いました。



最後に正田圭さんについて。

脱社畜戦争でずいぶん評判を落としてしまいましたが、本に書いてあることはよかったと思うんですよね...。

関連記事:正田圭さんの「サクッと起業してサクッと売却する」が会社員の僕にグッと響いた

「会社を売る」という発想が面白かったです。