「脱社畜」から「コツコツ真面目に会社員」への揺り戻しがきたときこそ、自分の価値観を見直すときだ



1957年。

米国の雑誌に衝撃的な実験結果が掲載された。

映画の中で、人間が意識できないほど短い1コマに

「コーラを飲め」

「ポップコーンを食べろ」

という文字メッセージを繰り返しはさんで放映したところ、コーラとポップコーンの売上が急増したというのだ。


このように、あまりにも短すぎて知覚できないものの、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすものを「サブリミナル効果」と呼んだ。


2018年。

ツイッターを見ると様々な人が

「脱社畜」

を叫んでいた。

「好きなように生きろ」

「社畜を脱せよ」

「多動力!」


もちろんこれは「意識できないほど短い時間」に発信されていたわけではない。

しかし、ツイッターのタイムラインにたびたび現れる「脱社畜」の強いメッセージは、それまで「会社員をやめること」を意識していなかった社会人の潜在意識に働きかけていたのではないかと思う。

「会社はクソである」

「奴隷のように働き、死んだ魚みたいな目をして会社に行く日々を過ごしていいのか?」


繰り返し繰り返し目にするこれらのメッセージが、日々の不満を抱える会社員の潜在意識に響いていた可能性は高い。

その結果、生まれたのが会社員卒業を支援したり、社外での活動を支援するサロンのバブルだった。


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「コツコツ真面目に会社員」への回帰

昨年はnoteとサロンが流行した。

専門性がなく、ノリで会社をやめてしまった人でも、注目さえ集めればあぶく銭のようにお金を稼げるのが2018年だった。


ツイッターのタイムラインに限った話になるが、

2016年はnoteバブル。

2017年は仮想通貨バブル。

そして2018年はサロンバブル&第二次noteバブルの1年だったといえる。


しかし最近は「脱社畜」から「真面目な会社員」への揺り戻しの波がきているように感じる。


特に、2019年1月に勃発した「えらいてんちょう」vs「脱社畜サロン」の戦争で、経歴詐称の疑惑を投げかけられた脱社畜サロン運営者のまずい対応を見て、


「やっぱりまともな社会人経験がないとまずいんじゃないか」


と目が覚めた人も多かったのではないか。


togetter.com


脱社畜戦争以前からも、

「真面目に会社員をやることの何が悪いんだ」

「会社員は給料ももらえて、仕事も学べる」

「脱社畜した人は情弱ビジネスでしか稼げていない」

などの意見や疑問を投げかける人も増えてきていて、ある意味ではとても意識が高かった「脱社畜」を標榜する人たちの価値観を揺らしつつあるようにも見える。


ネットには「空気」がある。

脱社畜ムードだったネットの「空気」は明らかに変わりはじめ、「会社員も実はなかなか良いのではないか」という「空気」が醸成されつつあるように感じる。

実際、向こう見ずに会社を辞めるよりも、会社に勤めていた方が得なこともある。

会社員を続けながら自分の専門領域を見つけ、会社をうまく利用して経験と実績を積み、世に名乗りを上げている友人もいる。


会社員は悪いことばかりではない。

法人という大きなインフラに乗っかり、使い方によってはお金をもらいながら自分の市場価値を大きく育てることもできる。

世の中を変えるような大きな仕事ができる可能性があるのも会社員の醍醐味だ。


脱社畜の魔法にかけられていた脱社畜ワナビーが2019年になって「会社員ならではメリット」を改めて見つめ直した結果、

「会社員としての市場価値を高める方向への回帰」

が進む可能性が高いのではないか。

その場合、将来的には英語教育や資格試験、ビジネススクールや会社員向けのセミナーのバブルが来るかもしれない。


空気が中立に戻った時期に自分を見つめ直す

僕たちは意識せずとも周りの人たちから影響を受ける。

同じように、ネットに常時触れている人は、意識せずとも「ネットの空気」に影響を受けてしまうだろう。

四六時中ツイッターを開いている人がツイッターの空気に影響を受けないわけがない。


たとえば一昔前、2ちゃんねるのまとめサイトが流行ったときはネットに「嫌韓」の雰囲気ができていた。

まとめサイトが「嫌韓」を煽りまくっていたからだ。

あの頃はまとめサイトが空気を作っていたが、今、ネットの空気を作っているのはインフルエンサーだ。

そんなインフルエンサーの魔法が解けつつある今だからこそ、中立的な視点で自分自身を見つめ直すことができる。


「自分は本当に脱社畜したかったのか?」

「自分が大事にしている価値観は何か?」

「自分にとって譲れないものは何か?

「どんな人生を歩みたいと願っていたのか?」


などをノートに書いて、改めて自分に問いかけてみるのがいい。


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人間、洗脳にかかっているときはなかなか自分の心を見つめることができないものだ。

洗脳が自分の心にモヤをかけてしまうからだ。


人々はバブルは弾けた後になって初めてバブルだったことに気付くという。

脱社畜バブルや多動力、副業ブームが一過性のものだったのかはおそらくこれから明らかになるだろうが、いずれにしても大事なのは、自分自身の心を周りに流されずに見つめ直すことだ。

ネットの空気が「会社員も悪くない」という方向に傾いたときに心が揺らぐようなら絶対に会社員を続けたほうがいいし、

ネットの空気が変わってもやっぱり独立を目指したいならば、もうそれが自分の進むべき道だということだ。


個人的には、手帳に時系列で自分の心情を吐き出しておくと、感情の移り変わりが可視化されて面白いのでおすすめしたい。

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