人間には「聞いて理解する」のが得意なタイプと、「読んで理解する」のが得意なタイプがいる。
聞いて理解するのが得意なタイプの人は学校の成績が良い場合が多い。
というのも、授業で聞いたことをその場で理解し、記憶することができるため、「聞く」が主体の学校の授業などと相性がいいからだ。
僕は「聞いて覚える」のがものすごく苦手だった。
退屈な話を聞いていると別のことをしたくなってしまうし、そもそも興味のないことをじっと座って聞き続けるのが好きではない。
そんな自分の性格に自覚的になったのは最近で、以前は「僕はなんて集中力のないアホなんだろうか」と頭を悩ませていた。
あとになって知ったことだが、これはおそらくADHDの典型的な症状なのだろう。
僕は社会不適合者なのかもしれない。
「聞いて理解するのが得意な人」と、「読んで理解するのが得意な人」を意識したのは、
何かのビジネス本で「どんな報告スタイルが望ましいか」についての記述を読んでからだ。
「聞いて理解する」タイプの上司には資料は簡潔に作り、口頭で内容を説明するのが良い。
「読んで理解する」タイプの上司には資料を読んでわかるように詳細に作り、口頭での説明は補足程度で良い。
上司のタイプに合った報告スタイルを取ることで、効率的に報告を行うことができる。
読んでわかることを音読するのは時間の無駄
会社には数え切れないほどの無駄がある。
社内向けの資料を数人かけて膨大な時間を費やして作成したり、何も決まらない会議に大量の人間を集めたり。
特に退屈なのが、大人数の前でプロジェクトの状況を読み上げて報告する会議だ。
Excelに書かれた状況を上から順番に
「このプロジェクトは現在こんな状況で、課題は〜」
みたいに報告していく。
自分でやりながらいつも思うのだが、これを音読する必要あるだろうか?
書いてあることは読めばわかるし、読んでわからなかったことはその場で聞くよりもチャットに投げた方がログが残るのではないか。
それにほとんどの人は、自分が担当していないプロジェクトについては興味がなさそうだし、話を聞いたところで知識のない部外者からの効果的なアドバイスは期待できない。
報告会議を大人数でやりたがる人は「チームの団結が大事」と主張しがちだが、仕事における「チームの団結」は目標を共にして成果を最大にするために協力していくことであって、同調圧力をかけてみんなで無駄な時間を過ごすことではない。
もしかしたらこんな疑問を抱いてしまうのは、自分が「読んで理解する」のを好むからなのかもしれない。
聞いて理解するのが心地よい人もいるのだ。
しかしどちらかというと「合理的であること」を好む自分にとって、読めばわかることを音読して発表する時間は無駄のように思えてならず、それなら有名な「Amazon.comの会議」のように、
「最初の15分は話さないで資料を読む時間に当てる」
などの施策を行ったほうが効率が良くなるように思えてしまう。
新人研修に高い金をかける価値はあるのか
研修の費用はものすごく高い。
一日の研修で一人あたり10万円以上の料金を研修業者に支払っている。
研修を受けている間も人件費や場所代は発生しているので、実質的なコストは業者に支払う額の二倍以上になるだろう。
研修は金銭的には超贅沢な投資なのだ。
しかし僕の会社員経験を振り返って、研修が役に立ったと思えることは非常に少ない。
理由は3つある。
1つ目は、学んだことは復習しなければ定着しないからだ。
研修で詰め込まれたテキストは復習に適しているとは言い難く、口頭での説明は文字にして全てを残せるわけではないので、情報の抜けが多い。
その日に話を聞いてわかった気になったものの、現場に戻ると
「あれ?研修でやった気がするけどなんだっけ?」
とハタと手が止まってしまうのが現実ではないだろうか。
2つ目は、レベルが個人に最適化されていないことだ。
集合研修は同期と横並びのカリキュラムが用意され、横並びで同じ授業を受けることになる。
その内容を理解している人もいれば、さっぱりわからない人もいる。
理解している人からすると簡単すぎるが、何も知らない人にとっては難しいような内容が一気に詰め込まれてしまっているため、一人あたりの学びの量は少なくなってしまうのだ。
最後に、研修自体が書籍の劣化コピーであることだ。
研修では講師がパワポを作ってきて、講義の中で箇条書きの文字列を読み上げる。
こんな風に箇条書きにされた内容をいちいち読み上げられても、後から復習しづらいし、そもそも内容自体が市販の2,000円の書籍に書かれているようなことを10倍に薄めたものなので、10万円/日ものお金を払って受ける価値があるとは思えない。
個人的には、必要な情報が書かれた市販の書籍を配ってもらって、
「9時〜15時まで内容を覚えて、15時〜18時でアウトプット出せい」
くらいの方が実りが多いと考えていた。
とはいえ、長年の歴史の上に積み重ねてきた「研修」の形を変えるのは難しいだろうし、書籍に丸投げなんてしたら「人事部が仕事していない」ことになってしまうので、こんな案は100%通らないだろう。
ずいぶん話が脱線してしまったが、「読んで理解する派」にとっては研修の無味乾燥なパワポは辛いに違いなく、いま頑張って研修を受けている新卒の皆さんがいたとしたら、
「大丈夫、俺も辛かったよ」
と伝えたい。
社会人になって初めての金曜日が楽しみだね。