何者にでもなれてしまうツイッターの世界でマウンティングを取り合う滑稽さ







3年くらい前に、ツイッターのbotを作ったことがある。

結果として、そのbotはフォロワー10,000人程度まで育った(後に凍結されて使用不能になった)


アルゴリズムは超簡単だ。

ランダムにフォローすれば、そのうちの数人かがフォローバックしてくれる。

その作業をプログラムによって自動化し、半年くらい続けてみたら、フォロワーは10,000人程度に達した。

タイムラインは当然、カオスだった。
自分もbotだが、フォローバックしてくるのもbotという、なんだか機械同士の化かし合いの様相だった。


botがつぶやく内容はネットから拾った名言である。
それをデータベースに突っ込み、3時間おきにツイートするだけだ。


ネカマアカウントを作ったこともある。

言い訳だが、僕に怪しい趣味があるわけではなく、昔ひっそりと作っていた下ネタブログの「導線」に使えないだろうか、という実験だった。


「台湾 美女」で検索して出てくた画像をアイコンにして、

ツイッター初心者ですっ!みんながやってるので始めてみましたっ!

みたいなbioを書いた。

そんな可愛いアイコンで、DJあおいをちょっと馬鹿っぽくしたようなツイートすると、

「わかる!わかるよ!大変だったね!」

なんてリプライしてくる謎の共感野郎が現れたり、

なんか気持ち悪い男から自撮り写真とか、「ご飯行きませんか?」みたいなDMがたくさん届いて、その頃はあまりツイッターの世界観に触れていないなりに、女子アカウントの苦労が少しわかった気がした。


世の中にはキモい奴がたくさんいるのだ。

無論、ネカマやってる奴は最もキモい。そこはすまん。


ツイッターではカリスマアカウントもけっこう簡単に作れる。

bioに「外資系金融シニアマネージャー」みたいなことを書いて、

グループディスカッションではロジックが大事だよ♪

みたいなことをしたり顔で呟くと、なぜか就活生から尊敬されてしまう。

そんなアカウントを作った僕の実態はワーキングプアで週末引きこもりであるにも関わらず、である。


ツイッターキラキラ女子研究の第一人者を自負する今の僕なら、キラキラアカウントにだってなれると思う。

最近キラキラ界隈を騒がせた「〆鯖」というアカウントを真似して、サンマというアカウントを作ってみたり、キラキラの女王チワワ先輩ならぬブルドック先輩のようなアカウントを作って、「港区の闇」について語ればいいはずだ。

当然、港区の闇など全く知らないが、ネットで聞きかじった知識を適当につぶやけばそれっぽく聞こえるはずだ。

140文字でそれっぽいことを言うのは、小説を書くよりよっぽど簡単なのだ。


さて、ここまで長々と恥さらしな話を書いてきて伝えたかったことは、ネカマアカウントを作成した愚か者の話でもなく、キラキラアカウントへの愛でもない。


ツイッターの世界では、簡単に、何者にでもなれる

ということだ。


ツイッターしか趣味のない女が

「可愛い私♡外銀くんから誘いがいっぱい来て大変♡」

と語っていたり、引きこもりニートが

「ぼくはイケてる商社マンだよ。いい仕事の後の一杯はうまいね。

非モテ諸君はパソコンの前に張り付いて僕のお酒を見てておくれよ」

などと言っているのがツイッターの現状で、もしかしたらそのカリスマアカウントの中身は「俺かもしれない」、ということだ。


モテる風なツイートしている奴でも、実はすげー不細工かもしれないし、キラキラの実態はパソコンに貼り付いてるオタクかもしれない。


匿名アカウントだと相手が見えないから、結局、読み手が想像するしかないのだ。


この人は何者なんだろう?

と。


結局、何を言うかよりも、誰が言うかの方が大切

昔NLPの本で読んだんだけど、人の脳は「足りない」という状態を嫌うようにできているらしい。

だから、情報が足りない場合は、脳が勝手に補完するようだ。


ツイッターは所詮、アイコンと文字列でしかない。
そのため顔写真をアイコンにしない限り、本人の実態はわからない。

ツイート内容とbio、アイコンの印象で「どんな人なのか」を脳が勝手に想像し、補完する。


石原さとみのアイコンで「今日もデート、明日もデート♡」などとつぶやいている女子アカウントがいたら、すごく可愛くてモテる子なんだろうな、という印象を受ける。

実態は足の臭いブスである可能性もあるのに。

「外資系金融勤務」と書いてビジネス本にあるような自己啓発系の話をつぶやけば、すごいデキる人に見えるかもしれない。


大量にフォロワーを抱えるアルファツイッタラーはだいたい4パターンに分けられる。

(1)元々リアルで活躍していた人
(2)外資系金融/外資系コンサル/広告/商社などの肩書きがつく人
(3)際立って鋭い(面白い)ツイートをする人
(4)初期時代からツイッターをやってた人

の4パターンだ。

なんらかの目を引く肩書を持つ人は、人気が出やすい。

フォロワーがフォロワーを呼ぶのも事実だ。フォロワーが多いアカウントは、新しく目についた人にもフォローされやすい。


そして、アルファツイッタラーが発するツイートは、無条件に受け入れられやすい。

フォロワーがたくさんいる○○さんが言っているから正しいはずだ

みたいに。


「何を言うか」よりも、「誰が言うか」で判断されるのがネットの世界なのである。


そして、「誰が言うか」の「誰」は、情報の受け手が脳内で創りあげたイメージである場合がほとんどだ。

感動したあのツイートも、実際はしょうもない引きこもりがつぶやいていた可能性だってある。


そんな実態不明のツイッターランドであるにも関わらず、実態がわからん者同士が実態のわからん相手と日々マウンティングの取り合いを繰り広げている。

モテ、年収、学歴、結婚などがメインテーマだ。

アルファモテツイッタラーらしき人物が、ありがたいお言葉を吐く。

リツイートされる。中身は不細工かもしれないのに。

キモそうに"見える"アカウントが吐いたセリフは全力で否定される。

もしかしたら中身はめちゃくちゃイケメンかもしれないが、発信が下手だとそれは絶対に伝わらない。


日々繰り広げられるマウンティング。

どんなに勝ち誇ったところで、ドヤツイートしている奴が実際どんな奴なのかは全くわからないわけで、これはもはや幽霊と幽霊が殴りあっているようなものだ。誰も幸せにならない。


結論として、ツイッターではマウンティングの取り合いは華麗にスルーして、その情報が、

・有用かどうか
・面白いかどうか

だけを自分の価値観に照らしあわせて、必要なものだけを冷静に取り入れていくのがいいと思う。

肩書やフォロワー数はスルーして、中身だけを見る努力をしなければ、直接的か間接的に関わらず、謎のマウンティング合戦に巻き込まれてしまうだろう。


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