橘玲先生の『幸福の資本論』67ページに年収と幸福度の関係についてのグラフがありました。
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ここでいう「効用」とは、「欲望を満たす度合い」のことです。
年収が低いうちは年収の増加が幸福度を上げる度合いは大きいですが、
年収が上がるにつれて、年収が上がっても幸福度はなかなか増えなくなります。
橘玲さんの本では、
「アメリカでは年収7万5000ドル、日本では年収800万円を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなることがわかっています」
と書かれています。
家族を持っている場合は世帯年収が1500万円を超えるとお金の限界効用はゼロに近づくそうです。
つまり、世帯年収が1500万円を超えると、それ以上収入が増えても幸福度が上がらなくなるということです。
『幸福の資本論』の中ではこの研究の元データが示されていなかったのですが、たしかに1500万円の年収があれば、
- 年に一度の家族旅行
- 月に一度の贅沢な外食
- 好きなマンションを選んで住める
- 服もそれほど我慢せずに買える
といった、ある程度の贅沢もできるし、「文化的で最低限度の生活」より贅沢な生活ができるようになります。
この状態を
「お金から『自由』になった状態」
と呼び、いったんお金から自由になると、それ以上収入が増えても幸福度は変わらなくなる、というのが『幸福の資本論』の主張です。
お金。
当たり前ですが、お金は大事です。
僕の友人は昔、
「お金は不幸を防ぐ効果があるんだ」
と言っていました。
お金を払ってベビーシッターや家政婦を雇えば、嫌な掃除や面倒な家事を代行してもらうことができます。
お金があれば、明日食べるものを心配することもありません。
僕が大学生のときですが、あまりにも金がなくて、「白米」と「ごはんですよ」だけで一ヶ月生活したことがあります。
金がないと、野菜も肉も買えず、タンパク質もビタミンも摂ることができないのです。
電気代を節約するために布団にくるまって寝たり、シャワーのガス代をケチったり、お金がない生活は何かと不便でした。
「お金は人間の不幸を防いでくれる」
そして、
「お金の心配ばかりしてしまう生活は不幸である」
というのは自分の経験からも事実だと思います。
その一方で、ある程度の収入を超えるとそれ以上お金が増えても幸せにならない、というのも十分にありえると思うのです。
なぜか?
それは、「幸福度に蓋をしているもの」が「お金」から「時間」に変わるからです。
ここからの主張は本に書かれていたこととは異なります。
『幸福の資本論』では、ある程度の収入になると、
- 高級レストランに行く
- 子供を習い事に通わせる
- 家族旅行に行く
などの「世間一般の幸福を実現するもの」は十分に手に入れることができるため、それ以上お金が増えてもお金による満足度は上がりづらくなる、と主張しています。
「お金を使うことで得られる満足」がだいたい満たされてしまうことで、満足度が上がりにくいという主張です。
もちろんこの主張には同意するのですが、幸福度が上がらない原因は
「お金で買える必要品はだいたい揃うから」
だけではないと思うのです。
僕たちの幸福に蓋をしているものは何でしょうか?
お金がないときはとにかく「お金」によって幸せを阻害されていました。
何もかも我慢ばかりで、欲しいものも買えない。
好きな場所にも行けない。
お金がないことで、不便さを感じることはたくさんありました。
でも、ある程度生活に困らなくなってからは、幸福度を押し下げる圧力は「お金」からではなく、「時間」から感じるようになってきたのです。
一日中働いて、「楽しい」とは言い難い仕事に人生の時間の大半を使い、自分の時間はほとんど取れない。
この状態では、たとえ生活に困らなくても幸せとは言えません。
というか、全然お金がなかった大学時代と、お金はあっても時間がない今のどちらが幸せだったかと言えば、どう考えても大学時代の方が幸せでした。
なぜかというと、自分で好きなことをして、好きなことに時間を使っていたからです。
結論です。
「お金」は不幸を防ぐために役に立つが、お金だけで幸福度を増やすには限界がある。
「自由な時間」は不幸を防ぐわけではないが、自由に時間を使えることで幸福度を押し上げる効果がある。
じゃあどんな風に時間を使うのが幸せかというと、誰もがわかっているように
「自分の好きなことに時間を投入する」
のが最も幸せなんですね。
橘玲先生も『幸福の資本論』155ページ「スペシャリストになるには」でこう主張しています。
私たちが自分に合ったプロフェッション(専門性)を獲得する戦略はたったひとつしかありません。
それは仕事の中で自分の好きなことを見つけ、そこにすべての時間とエネルギーを投入することです。
なぜなら、誰もがものごころついたときからそれだけをやってきたのですから。
これは橘玲先生が昔からずっと、彼の著作を通じて主張していることです。
「好きなことに人的資本のすべてを投入すること」
これこそが、他者より抜きん出たスペシャリストになる唯一の方法だというわけです。
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