日本代表の決勝トーナメント進出が決まった。
本当なら両手を上げて喜ぶべきところなのだが、どうしても悶々とした気持ちが晴れない。
きっと日本中の人が同じような気持ちで、悲しい顔をしているか、怒っているか、それとも「結果オーライ!よくやった!」と清々しい気分になっているか、色んな感情を抱えながら明日の仕事に向けて布団に入っていることだろう。
僕も一度は布団に入ったのだが、どうしても眠れなくて目が覚めた。
0対1で負けていた後半37分、最後の交代カードを使って長谷部を投入した後から、日本は露骨にパス回しに徹し、全く攻めなくなった。
負けているのに、攻めない。
なぜかというと、試合の後半27分の時点で、同時に行われていたセネガル vs コロンビアでコロンビアが1点取り、フェアプレーポイントによって日本の決勝トーナメント進出の可能性が出てきたからだ。
日本代表西野監督は、後半27分から37分の10分の間、どれだけ葛藤したことだろう。
本田を投入して1点を狙うか、長谷部を投入して時間を稼ぐか。
- 日本がポーランド相手に攻めて、1点を取って同点になる確率
- 日本がポーランド相手に攻めて、逆に点を取られて引き離される確率
- セネガルがコロンビア相手に追いつく確率
- コロンビアがそのまま逃げ切る確率
それらを10分で判断し、
「残り10分でリスクを取って点を取りに行くよりも、確実に0-1のまま時間稼ぎをする」
「このままコロンビアが逃げ切る確率の方が高い」
ことに賭けた。
サッカーに詳しくないからわからないけど、ワールドカップ史上でも相当大きなギャンブルだったのではないだろうか。
試合の流れの詳細は朝日の記事が詳しい。
後半残り10分間、日本がずっとパス回しをして、全く攻めなかったのをテレビで観て、こみ上げてくるものがあった。
こみ上げる感情が何だったのか、正直うまく言葉にできないんだけど、なぜか
「恥ずかしい」
と思ってしまったのだ。
勝負に徹する選手たちも悔しかったと思う。
会場から大ブーイングを浴びて、おそらく明日は世界中から笑い者にされてしまうのではないだろうか?
それでも、コロンビアの勝利に賭け、「攻めないこと」を選択した。
結果、決勝トーナメント進出。
「勝てば官軍負ければ賊軍」なのだろうか。
ものすごく難しい試合だったと思う。
試合の後の選手も、「難しい試合だった」としきりに口にしていたのが気になった。
試合が終わった直後は僕も、「男らしくない」とか「情けない」と思いながら、ぬるくなったビールを流し込んだ。
ちょうど下のツイートのような気分だった。
サッカー界のレジェンド、クライフはこう言った。
— ケーゴ (@Kgo_Number10) 2018年6月28日
「美しく敗れる事を恥と思うな、無様に勝つことを恥と思え。」
決勝トーナメントには進めたけど、後半に長谷部が入ってからの闘いぶりはあまりに無様だった。
必死に同点に追いつこうとして、その結果、コロンビアに救われるなら分かる。
— ケーゴ (@Kgo_Number10) 2018年6月28日
もし0-1じゃなくてドローだったら、後半途中からの戦い方も受け入れられる。
セネガルが点を取らないことを信じながら戦う姿は、あまりにカッコわるい。
あんな日本代表はもう二度と見たくない。
でも、ツイッターには
「勝負に徹してやっと神風特攻隊の精神から抜け出せた」
とか、
「トーナメントに進める確率が高い戦略を選んだ英断だ」
とか、本当に色んな人が色んな意見を述べていて、結果を残したのはたしかに見事だったと言えるかもしれない...と思い直したりもした。
「日本代表の得点力」
— 内藤秀明 (@nikutohide) 2018年6月28日
「コロンビアの守備力」
を秤にかけて
冷静にコロンビアのほうが信用できるという判断を下し、長谷部という守備的な選手を投入。
そのまま試合に終わらせて
決勝トーナメント進出を決めた。
すごいな。西野監督。
なんか3戦ともこういう流れじゃなければ絶対に決勝行けなかったみたいな展開で、西野監督は何回タイムリープして全ての選択肢で正解を選んだんだろう
— ジャックフロスト (@Heehoo_kun) 2018年6月28日
モヤモヤとする気持ち、みんなも同じだろうか?
決勝トーナメントで結果を残せばきっと、今回の試合の最後の采配も「終わりよければすべてよし」となると思う。
逆に決勝トーナメントで情けない試合をして負けてしまったら、「恥だけかいて何をやっておるのだ...」と日本中が目を覆う展開になってしまうだろう。
次の試合は7月2日、月曜日の午前3時だ。
夜中まで起きて応援するのが難しい人もいるだろう。
でも、ベスト16戦ではなんとしても、日本国民が抱えるこのモヤモヤを吹き飛ばしてほしい。
そうじゃないと、このW杯はあまりにも後味の悪いものになってしまうから。
ポーランド戦に対する海外メディアの反応
6月29日の日経新聞夕刊、スポーツ欄の記事から。
酷評が多い。
英メディア
「ひどい試合だった。日本は『フェアプレー』によって一次リーグ突破を決めたが、最もスポーツマンシップに反した試合になった。本当につまらない試合。喜劇的で超現実的な結末を迎えた」
北アイルランド代表のオニール監督
「監督経験者として、他の試合の行方に運命を託すという決断には唖然とした」
ロシアのスポルト・エクスプレス紙
「スキャンダルだ。日本はボールを回して時間を稼ぎ、ポーランドは攻撃しなかった。両国はサッカーをばかにした。日本は今やサムライと呼ぶのも気が引ける。ボールを回して終了の笛を待つことが『フェアプレー』だろうか」
日本 vs ベルギー戦
7月3日(火) 午前3時から行われた日本 vs ベルギー戦が行われた。
前評判では日本の強さはドラクエにたとえたらスライムベス、ドラゴンボールにたとえたらヤムチャのように言われていたが、蓋をあけると大健闘だった。
なんと、FIFAランキング3位のベルギー相手に日本が2点を先制し、あと一歩のところまで追い詰めたのだ。
ツイッターでスライムやらヤムチャやら...こんなに言われてきたのに、ベルギー相手に3ー2だよ?ヤムチャがフリーザにこんな接戦に持ち込めるだろうか?スライムベスが魔王オルゴデミーラにこんな試合を行えるだろうか?日本はよく頑張った。日本お疲れ🇯🇵#ワールドカップ pic.twitter.com/V6Yh7ebCjL
— Ricky (@RickyMouse0901) 2018年7月2日
前回のポーランド戦で日本を酷評した海外メディアも、今回は日本の健闘を褒め称えた。
英公共放送「BBC」は「日本にとってあと少し…でも遠かった」と健闘を認め、「ハラグチの冷静を保ったシュートでリードすると、目覚ましいイヌイがロングシュートで2点目を決めた」と日本の2ゴールを振り返っている。
米スポーツ専門局「ESPN」は試合の経過を追う記事の中で、「日本のイヌイがまた輝いた」と大会2点目を挙げた背番号14を称賛している
負けはしたが、素晴らしい内容。
結果を出せば、誰もが認める。
日本代表のワールドカップは終わってしまったが、西野ジャパンの采配を批判する人はほとんどいなくなったように感じる。