『ノルウェイの森』永沢さんの名言まとめ



僕は村上春樹さんの『ノルウェイの森』という小説を時々読み返していて、とりわけ「永沢さん」と呼ばれる登場人物が好きです。

彼のセリフはいつ読んでもカッコいいなと思えるものですし、本質的です。

改めてひと通り読んでみて、永沢さんの名セリフを抜き出してみたのですが、思ってた以上に少なくて、印象と実態は違うのだなぁと感じました。

一つ一つのセリフが印象的なため、たくさん登場していたように感じていただけで、実はそれほど多く登場していたわけではなさそうです。

この記事では永沢さんの心に響くセリフをまとめています。

他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる

「永沢さんはどんな作家が好きなんですか?」と僕は訊ねてみた。
「バルザック、ダンテ、ジョセフ・コンラッド、ディッケンズ」と彼は即座に答えた。
「あなり今日性のある作家とは言えないですね」
「だから読むのさ。他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。
そんなものは田舎者、俗物の世界だ。まともな人間はそんな恥ずかしいことはしない」

可能性がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通りすぎるというのは大変にむずかしいことなんだ

「日が暮れる、女の子が町に出てきてそのへんをうろうろして酒を飲んだりしている。
彼女たちは何かを求めていて、俺はその何かを彼女たちに与えることができるんだ。それは本当に簡単なことなんだよ。
水道の蛇口をひねって水を飲むのと同じくらい簡単なことなんだ。そんなのアッという間に落とせるし、向こうだってそれを待ってるのさ。
それが可能性というものだよ。そういう可能性が目の前に転がっていて、それをみすみすやりすごせるか?
自分に能力があって、その能力を発揮できる場があって、お前は黙って通りすぎるかい?

どうせためすんなら一番でかい入れものの中でためしてみたいのさ

「じゃあどうして永沢さんは外務省に入るんですか?」

「いろいろと理由はあるさ」と永沢さんは言った。

「外地勤務が好きだとか、いろいろな。でもいちばんの理由は自分の能力をためしてみたいってことだよな。どうせためすんならいちばんでかい入れものの中でためしてみたいのさ。つまりは国家だよ。このばかでかい官僚機構の中でどこまで自分が上にのぼれるか、どこまで自分が力を持てるかそういうのを試してみたいんだよ、わかるか?」

必要なものは理想ではなく行動規範だ

「そして理想というようなものも持ちあwせてないんでしょうね?」

「もちろんない」と彼は言った。

「人生にそんなもの必要ないんだ。必要なものは理想ではなく行動規範だ」

紳士であることだ

「ねえ、永沢さん。ところであなたの人生の行動規範っていったいどんなものなんですか?」と僕は訊いてみた。

「お前、きっと笑うよ」と彼は言った。

「笑いませんよ」と僕は言った。

「紳士であることだ」

僕は笑いはしなかったけれどあやうく椅子から転げ落ちそうになった。「紳士ってあの紳士ですか?」

「そうだよ、あの紳士だよ」と彼は言った。

「紳士であることって、どういうことなんですか?もし定義があるなら教えてもらえませんか」

「自分がやりたいことをやるのではなく、やるべきことをやるのが紳士だ」

不公平な社会とは能力を発揮できる社会でもある

「あなたは人生に対して恐怖を感じるということはないんですか?」と僕は訊いてみた。

「あのね、俺はそれほど馬鹿じゃないよ」と永沢さんは言った。

「もちろん人生に対して恐怖を感じることはある。そんなのあたり前じゃないか。ただ俺はそういうのを前提条件としては認めない。

自分の力を100パーセント発揮してやれるところまでやる。

欲しいものはとるし、欲しくないものはとらない。そうやって生きていく。

駄目だったら駄目になったところでまた考える。

不公平な社会というのは逆に考えれば能力を発揮できる社会でもある」

あれは努力じゃなくてただの労働だ

「でもね、俺は空を見上げて果物が落ちてくるのを待ってるわけじゃないぜ。俺は俺なりにずいぶん努力をしている。お前の10倍くらい努力してる」

「そうでしょうね」と僕は認めた。

「だからね、ときどき俺は世間を見まわして本当にうんざりするんだ。

どうしてこいつらは努力というものをしないんだろう、努力もせずに不平ばかり言うんだろうってね」

僕はあきれて永沢さんの顔を眺めた。

「僕の目から見れば世の中の人々はずいぶんあくせくと身を粉にして働いているような印象を受けるんですが、僕の見方はまあ違っているんでしょうか?」

「あれは努力じゃなくてただの労働だ」と永沢さんは簡単に言った。

「俺の言う努力というのはそういうのじゃない。努力というのはもっと主体的に目的的になされるもののことだ」

「たとえば就職が決って他のみんながホッとしている時にスペイン語の勉強を始めるとか、そういうことですね?」

「そういうことだよ。俺は春までにスペイン語を完全にマスターする。英語とドイツ語とフランス語はもうできあがってるし、イタリア語もだいたいはできる。こういうのって努力なくしてできるか?」


ノルウェイの森 (講談社文庫)

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