「官僚制の逆機能」は教科書の中だけの言葉だと思ってたけど、意外と身の周りで起こり得るんだなって。



最近、担当しているプロジェクトの雰囲気がどうも重くなった気がして、どうしたらこの状況を脱却できるだろうかと考えていました。


プロジェクトの規模が小さかった頃はメンバー間の垣根もなく風通しも良かったのに、どうも最近メンバー間に”見えない壁”のようなものを感じています。


この違和感はうまく言葉にできないのですが、チームの成長と比例して大きくなっていくように感じていました。


この違和感の原因はなんだろうと考えて、思いつく限りの理由をノートに書き出してみたら、

ずいぶん前に経営学の教科書で読んだ「官僚制の逆機能」と呼ばれる問題とそっくりだったのです。


「官僚制の逆機能」を考えるには、まず「官僚制」と呼ばれる組織形態について理解しなければいけません。

官僚制とは組織運営の手法の一つで、その特徴は3つに集約されます。

難しい書き方をすると以下の通りです。

  • 標準化:抽象的・一般的な規則に基づいて職務が遂行される
  • 階層性:権限のヒエラルキーが明確になっている
  • 没人格性:支配者も服従者も非人格的な秩序に服従し,制定された規則の範囲内で命令と服従がなされる

MBA用語集:官僚制


くだけた書き方をすると、こんな感じです。

  • 「誰が何をするか」を明確にルールを作り、それをひたすら守る
  • 偉い人がいて、その命令に従う
  • 各人の技能は「誰でもできるようにする」ことが望ましい


このような組織運営はおそらく多くの会社に当てはまっていると思います。

この官僚制に対して、マートンという学者が


「官僚制はたしかに効率的だけど、行き過ぎた官僚制には弊害もあるよ」


と唱えました。

これが「官僚制の逆機能」です。


「官僚制の逆機能」は以下のような特徴が挙げられています。

なんとなく事例が思い浮かぶ人もいるのではないでしょうか。


  • 規則が万能で、「ルールに無いことはできない」と杓子定規な対応をする
  • できるだけ責任を負わないように保身に走る
  • 情報をオープンにすることを避ける
  • 前例に無いことはやろうとしない
  • 前例に従うことを原則とする
  • 「他がこうしているから」という画一的な対応を好む
  • 権威主義。なんか偉そうな人が多い
  • 縦割り構造で、専門外の業務を極力避けようとする
  • 閉鎖的で、部署を越えた協力が少ない
  • 書類がめちゃくちゃ多い。
  • 書類を中心に仕事を進め、中には意味があるかわからないものもたくさんある

wikipedia:官僚制


このように教科書に書かれているような事例が自分の身の周りで起こるなんて...と思うと、不思議な気持ちになりました。


僕はそれほど頻繁に転職を繰り返しているわけではないので、他の会社のことはよくわかりません。

ですが、色んな方のブログを読んだり、話を聞いたりする限り、


日本の大企業の閉塞感


は主に「官僚制の逆機能」によって引き起こされているのではないかと感じました。


官僚制は決まりきった業務をこなすにはとても効率的な組織運営手法だと思います。

その分、個人の独創性は極力抑えられ、組織をルールで縛ります。

技能が属人化しないように、なるべくみんなが同じことをできるように標準化を目指します。


たしかにクールで効率的ですが、個人が情熱を燃やして、


「これは俺の責任だ!うおおおお!絶対に成功させてやるぜ!」


というようなノリにはなりにくい仕組みでもあります。



なんとかならんものでしょうか。



たとえば、


「車を作る」


という架空のプロジェクトがあったとします。

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車はタイヤやらハンドルやらモーターやら、たくさんのパーツを統合させてできたものです。

そこで、各パーツを作るためのチームを作り、分業することにしました。


タイヤ担当、ハンドル担当、モーター担当...


というようにチームを分けることで、効率的に車を作ることができると考えたからです。

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各チームはそれぞれの担当範囲に全力を尽くします。


タイヤのチームはタイヤに傷がないかを完璧にチェックし、

ハンドルのチームは1ミリの狂いもなく精密なハンドルを作り、

モーターのチームは完璧な性能のモーターを作ります。


各チームは週に一回集まり、「車製造プロジェクト」のプロジェクトマネージャーに各チームの状況を報告します。


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プロジェクトマネージャーが全体を見て、プロジェクト全体の調整を図るイメージですね。


それで、各チームが責任を持って、各チームの担当を全うしようとすればするほど、


他チームの仕事には干渉しない空気


ができつつあるのです。


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もちろん、


「車を作る」


という目的は全員が共有しているのですが、分業が進むにつれて、チーム間の見えない壁のようなものが生まれてきている気がして、

これが息苦しさの正体なのかな、と。


チームが大きくなるにつれてルールと会議が増えて、何か新しいことをする際の調整が大変になります。


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チーム間の摩擦を生まないように、さらにルールが整備されて、書類が増えて、会議が増えて...


その結果、教科書で見たような「官僚制」ができあがるわけですね。


チームをピラミッド型にして、各チームの責任を明確にすることは悪いことではないはずです。

各人は正しいことをやってるはずなのに、全体で見たらなんかおかしい。

一生懸命やっているのに、何か無駄な多い気がする。


官僚制の組織構造では、そういう違和感が生まれるわけです。


繰り返しになりますが、各個人は一生懸命、真面目に、自分の担当する仕事をこなしています。


ただ、自分の担当範囲に一生懸命になるあまり、


「良い車を完成させる」


という大きな目的が見えにくくなってしまうのです。


このような組織の問題を解決するための方法論を色々と調べていたら、


自己組織化されたチームを作るべし


という論が見つかりました。


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  • 分担はしても線は引かずに常にチームで助け合う
  • チームメンバーそれぞれが必要なタスクを自発的に考える
  • 目的(ビジョン)を共有して、ビジョンに向かってチームメンバーそれぞれが行動する
  • 指示しない・管理しない。でも責任は取る
  • チームに自由な裁量を与える
  • 自己組織化についてチームで話し合う

BIGLOBE:自己組織化されたチームを作るには


根底にあるのは「信頼」と「対話」です。


チームメンバーを信じて、任せる。

どんなチームにしたいかをちゃんと話し合う。


そして、ビジョンを共有する。


上から指示された作業をこなすことに集中しすぎると、どうしても自発的に何かを変えようという雰囲気は起こりにくくなります。


見えない何かに締め付けられているような感覚は、自主性を抑えつけられている圧迫感から来るものなのかもしれません。


チームをできるだけ小さくするなど、他にも工夫できる点はありそうですが、少しずつ現場を良くしていければと思っています。