俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

会社の役員に出世のコツを聞いてみた



新卒で入社した会社は新人教育が割と手厚く、


「新人のうちにたくさんの人から話を聴きなさい」


と、会社の役員と新人3人で60分ほどお話できる機会を設定してくれた。

僕は大きな会社で出世した役員はとんでもなくすごい人なんだろうな、と目を輝かせて役員の元を訪れた。


用意された会議室に威風堂々と座る役員には言葉にできない覇気があって、

新人の僕は終始圧倒されっぱなしだった。


「下手なことを言ったら入社早々クビだな」


と恐れおののき、失言だけはするまいと覚悟を決めた。


名前は忘れたが偉い役員の人は穏やかな口調で、これからの仕事のコツのようなものを丁寧に説明してくれた気がする。

正直ほとんど覚えていない。


談話の最後に、新人から役員に質問できる時間があった。

新人の頃の僕は実力はゼロだが意識だけは天に昇るほど高かったので、一番に手を上げて質問した。


「本日は貴重なお話をありがとうございました。

名前を忘れたがとても偉い役員さんに聞きたいことがあります。


役員さんが会社で重要なポジションに就くまでに日々心がけてきた『仕事のコツ』や『こだわり』のようなものはございますでしょうか」



名前は忘れたが偉い役員の人は数秒考え込み、こう言った。




「メールを出す前に、よく確認することかな」



その話を聞いたときの僕の顔はこんな感じになっていただろう。


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「メールを...見返す...?」


偉い人は続けた。


「間違ってメールを出してしまうと大変だからね。

メールの宛先をチェックして、内容に間違いがないか、よく確認してから出すように心がけていたんだよ」



......たしかに。

たしかに、大切だ。

メールの宛先は間違ってはいけない。


が、なんだろう。


意識が天より高かった僕は、


「誰よりも早く出社して、誰よりも遅く帰った」


とか、


「上司の仕事を先取りして、事前に上司の希望を全て叶えるようにしていた」


とか、そんなわかりやすい熱血エピソードを期待していた。


そんな期待に対して、「メールを慎重に出しましょう」とは......

ずいぶんショボい心がけのように感じてしまっていた。


もしかしたらこの「メールの点検」に何か重大な「出世の秘訣」のようなものが隠されているのかもしれないと思ったが、

考えても考えてもメールの点検はメールの点検でしかなく、

秘訣といっても「失敗しないこと」くらいしか考えられなかった。

名前は忘れたが偉い役員の人は、マジでメールをちゃんと出すことが大事だと言いたかったようだ。



このときから、僕は心の中で密かに疑問を抱いていた。


「会社で偉くなった人、実はあんまり物を考えてなかったんじゃね?」


と。


新人の頃の僕は意識がとても高く、友達も同様に意識の高い人が多かった。

意識が高い友達の中には、


「出身大学のOBで偉くなった人を訪問して話を聞こう」


みたいな奴がいて、一緒に○○会社の副社長とか、外資系金融の○○会社のなんとかプレジデント的な人に話を聞きに行った。


聞いた話を必死にノートに取って、

「日本は〜、海外は〜」

みたいな話をする偉い人を見て、


「す、すげェ...!やはり大企業の副社長にまで上り詰めた男は格が違う!めっちゃグローバル!」

と感動した。


が、なんだろう。

そこにもどこか拭いきれない違和感があった。


この人たちはたしかに偉い。

偉い人なんだが、話を聞いてもあんまりワクワクしないぞ、と。


もっと言うと、


「自らの手で未来を切り開く」


みたいな心意気を感じることはなく、なんだか新聞を読んでいるような感じで、

たしかに大きな話を聞かせてもらってはいるのだが、その人の一次体験を語っているわけではなく、

会社で起こったことを淡々と語られておられるような印象を受けた。


意識の高い僕は、ソフトバンクの新卒向け会社説明会に現れた孫正義の話を聞いて震えるほど感激したんだけど、

自らの手で道を切り開いてきたハゲとは違って、

なんというか会社に入って偉くなった人は、同じハゲでもなんとなく評論家っぽく感じた。


用意した舞台で踊っていたら偉くなったような、上っていくエスカレーターにたまたま乗り込んだだけのような、

新人ながらにそんな感じの印象を受けて、

僕は「偉くなる」ってなんだかフワッとしたもので、「偉い人の共通項」を見出すのは難しそうだな、と感じた。


つまり、出世に秘訣など存在しないのではないかと。


そして、会社員生活も長くなった今、あの頃聞いた話を思い出し、改めて確信に至ったことがある。



「会社員の出世は運が8割である」


と。


もちろん僕自身は窓際で、出世も何もしていない平会社員である。

その立場から何かを言っても負け犬の遠吠え程度にしかならないことは重々承知している。

その上で、僕の目から見てきた会社員を評論すると、やっぱり会社員の出世は運が8割だと思う。


会社員の出世は運が8割

会社員は思い通りにならないことが多い。

入社した会社によるのかもしれないが、規模の大きな会社であればあるほど、自分の意志以外の要素が自分のキャリアを決めてくる。


配属される部署。

配属された部署でどんな仕事をするか。

どんな上司の元で働くか。

どんな部下が自分のチームに入ってくるか。

配属された部署の仕事が時流にマッチしているか。

伸びる事業を担当しているか。

自分の意見が通りやすい環境なのか。

自分の仕事に対して自分の適性はあるのか。


これらを全て自分でコントロールすることはとても難しく、正直どんなアイテムを持ってゲームをスタートできるかは「ガチャ」である。

何を引くかで自分のキャリアは大きく変わる。


新卒で入った会社で全て恵まれた条件で仕事ができる人は稀だろう。

予期せぬ異動で積み重ねたキャリアが崩れてしまう人もいるかもしれない。


個人の努力によって全てをコントロールすることは若ければ若いほど難しい。

そして、若いときに運が良かったかどうかで、その会社でのキャリアが大きく変わってきてしまうのだ。


つまり、「新卒で入った会社でそのまま出世する」というゲームは運ゲーなのである。


運の要素を減らすには試行回数を増やすこと

試行回数が一回しかなければ、成功するかしないかはほぼ運で決まる。

しかし、試行回数を増やしていけば、運の要素はだんだんと減ってきて、実力に収束されていく。


「コントロールできる要素を増やす」という意味では、規模が小さい会社に入って自分の裁量を大きくし、チャレンジするのもいいかもしれない。

会社の中で社内政治を眺めるのではなく、市場価値と時流を見つめ、伸びそうな会社にポンと転職してそこでチャレンジしてきたのが有名な田端信太郎さんである。

田端信太郎さんの『ブランド人になれ』は読んで自分で考えて教訓を得る本


会社員の出世ゲームが運ゲーであることには変わりないが、

  • コントロールできる余地を増やす
  • 色んな場所でチャレンジして試行回数を増やす

というチート技を使って、運の要素を減らすのは効果的なライフハックと言えそうだ。


ふろむださんの本に書いてあるように、たとえ運ゲーであっても、一度ギャンブルに勝つと、その一度の勝利が次の勝利を呼び寄せてくれる。

勝利によって得られた信用とか実績によって、応援してくれる人が増えるからだ。

ふろむだ著『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』は一度読めば世の中の見方が変わる本

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている


だから、一度勝つまでは試行回数を増やして、あの手この手でチャレンジすることが重要なのだ。

会社員の場合は失敗のリスクは会社が背負ってくれるので、やり方次第ではとても美味しい部分を取りに行くことができる。


...というのは、インターネットの出世頭である田端信太郎さんが著書で述べていたことなので、気になる人は読んでみてほしい。

ブランド人になれ!  会社の奴隷解放宣言 (NewsPicks Book)

ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言 (NewsPicks Book)


「サラリーマン金太郎」に学ぶ出世の秘訣

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僕は学生の頃、「サラリーマン金太郎」という漫画を読んでサラリーマンとしての意識を高めてきた。

彼はすごい。


ムカつく奴は相手が偉くてもぶん殴り、拳と情熱で会社を動かしてきた。


サラリーマンながらに長者番付に名を連ねるような大活躍で、世界的な投資家であるジョージ・ソロスを倒した。


信念と根性のサラリーマンである。


「24時間、戦えますか?」


と言われていた、昭和の熱血サラリーマンの理想像だろう。


そんな金太郎の活躍を見て僕は震えるほど感動し、涙を流していたが、

冷静になると金太郎の成功のほとんどは、日本で最も金持ちであるこの婆さんに助けられたり、


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偉い政治家であるこの爺さんに助けられた結果、成し遂げたものなのである。

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彼らが金太郎を気に入った理由はよくわからない。


「君はいい顔をしている」

みたいな、ものすごく曖昧な理由で惚れ込むようになっていて、なぜか金太郎のやることなすこと助けに入るのだ。


ここから我々が学べることは一つである。


サラリーマン金太郎のように出世するコツは、役員を殴ることでもなく、暴走族のトップに立つことでもない。


偉くて金持ちの年寄りに気に入られることである。


この戦略は最強だ。


ジジイを落とす。

偉い人に気に入られる。

金持ちを惚れこませる。


そうすれば、既に成功した人があの手この手で助けてくれる。

めちゃくちゃ美味しいのだ。



DeNAの南場さんは生粋の人たらしだと聞いたことがある。

プロ野球参入の際にナベツネが彼女を支持したように、

偉い爺さん婆さんがこぞって彼女を応援してしまうのだ。


そうやって、爺さん婆さんに応援してもらって、自分の夢とか希望を後押ししてもらうことが、サラリーマン金太郎流出世のコツである。


ちなみに同じサラリーマンでも島耕作という奴はひどい。

女をたらしこんで出世に使っている男である。

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驚いたことに、島耕作も昭和の成功したサラリーマンの理想像のように扱われていたのだ。

普通に人間のクズだと思うのだが。


立場が人を成長させる

たくさんの「偉い人」を見てきたが、「会社で偉くなった人」が「狙ってそのポジションに就いた」ようには思えない。

逆に

「そのポジションに就いたことが、その人をその立場に相応しいレベルまで成長させた」

という方が実態に近いように思う。


その人が努力して成長した結果、出世したというよりも、

運良くそのポジションに就いたことが結果的にその人を成長させた

という方が正しいのではないか。


「鶏口となるも牛後となるなかれ」

という故事成句がある。


「大きな集団の中で尻にいて使われるよりも、小さな集団であっても長となるほうがよい」

という教訓だ。


大きな組織で末端の仕事をするよりも、小さな組織でリーダーとなって、市場に挑戦していったほうが成長も大きいように思う。

その人の置かれた立場が、その人を成長させるのだ。


どんな立場に就くかを会社員が自分の意志で全てコントロールするのは難しい。

まさに冒頭で述べたような運ゲーなのだが、運の要素を減らしてコントロールできる部分を増やすにはやはり、小さな組織でチャレンジするのが「オイシイ」ように感じている。