『呪術廻戦』のあらすじと、その面白さを語る



『呪術廻戦』が異常に面白いことには1年前から気付いていた。
いつか『呪術廻戦』の魅力を紹介したいと思い続けて1年が経ち、ついに何も語らぬままにアニメ化が決まってしまった。

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後出しで「面白い」と語りだすのはジャンプ大好きおじさんとしては情けない限りだが、『呪術廻戦』の面白さを伝えるのはなかなか難しい。

どこかで見たことがありそうで、今までにない新しさがある。

NARUTOのように、「仲間が大ピンチの時にパワーアップした主人公が駆けつけ、世界を救う」みたいな、スカッとするヒーローストーリーではない。

ハンターハンターのように、偉大な父の血を引く主人公が闘いの中で成長し、格上だった敵を驚かせ、またその素直さと正直さで味方をも変えていく...みたいな、キャラの魅力で一気に引き込んでいくタイプの漫画でもない。

穏やかな心を持ちながら怒りによって何かに目覚めるわけでもないし、背中を痛めた主人公が「好きです。今度は嘘じゃないっす」とヒロインに告白することもない。

キャラ設定はNARUTOっぽいようにも見えて、NARUTOではない。
バトルはハンターハンターっぽいようにも見えて、ハンターハンターとは違う。

どこかにありそうで、どこにもない。
でも抜群に面白い。

『呪術廻戦』は不思議な漫画である。


何が面白いのだろうか。


やはり『呪術廻戦』の面白さのポイントは、細やかな設定を背景にした「バトルの濃さ」にあるだろう。

「凝った設定とは何か」については後で解説するが、『呪術廻戦』のバトルは「単純な戦闘力のぶつかり合い」ではない。

ハンターハンターの念能力者同士の対決のように、

「力 + 頭脳 + 能力の相性」

によってバトルが展開されていく。

設定が凝っているバトル漫画は読み応えがあって面白いものだ。

『呪術廻戦』のバトルが「どれくらい濃いのか」を比較するために、「1話分のバトルを読み切るまでに必要な時間」をざっくり並べてみた。

単位の「分」は割と適当なのであまり気にしなくていい。
バトル内容の“濃度”を比べたものだと思ってもらえればいい。

なお、“薄い”からと言って面白くないわけではない。
設定がどれだけ凝っているかの目安だ。

漫画 1話の所要時間
刃牙 1分
キングダム 2分
ドラゴンボール 2分
NARUTO 3分
呪術廻戦 5分
ハンターハンター 6分
喧嘩商売 7分


『呪術廻戦』のバトルは中身が濃い。

「ルオオオ!!」と矛を振り回して天下の大将軍の一撃で敵を倒すのでもなく、「オレは怒ったぞーーーー!」と変身して無双するわけでもない。

それぞれのキャラクターが能力(術式)を持っていて、その能力を使い駆け引きしながら戦っていく。
バトルは感覚的にはハンターハンターや喧嘩商売に近いが、喧嘩商売ほど卑怯な真似はしない。

ちなみに刃牙はバトル漫画ではなくギャグ漫画である。
比較対象にするべきか迷ったが「1話分の内容が最も薄い例」として刃牙以上に適切な漫画が思いつかなかったため、最初に持ってきた。

『呪術廻戦』の面白さはあらすじで語らないと伝わらない気がするので、ざっくりとあらすじをまとめたい。

とはいえ、その魅力がブログで伝わるかは怪しいもので、『呪術廻戦』の面白さはコミックスで3回読んで初めて気付くような気もする。

呪術廻戦のあらすじ

主人公の名前は虎杖悠二(いたどりゆうじ)
両親は不明で、じいちゃんと二人、宮城県で暮らしていた。

1巻の表紙が虎杖悠二である。

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手から口が生えているように見えるが、ぬ~べ~ではない。

虎杖は異常に身体能力は高いが、病気で入院しているおじいちゃんのお見舞いに行かなければならないため運動部には入らず「オカルト研究会」で毎日を過ごしていた。


ある日、じいちゃんは虎杖にこう言い残して息を引き取った。

「オマエは強いから、人を助けろ」

「手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ」

「迷っても感謝されなくても、とにかく助けてやれ」

「オマエは大勢に囲まれて死ね 俺みたいにはなるなよ」

じいちゃんの遺言だった。

この遺言は呪いのように、虎杖の胸にのように刺さって残ることになる。


虎杖が通っていた高校には「特急呪物」が封印されていた。
両面宿儺という史上最悪の「呪い」を封じ込めたものだ。

「呪い」というとわかりづらいかもしれないが、人間の負の感情が集まって出来上がった妖怪のようなものだと思ってもらえればいい。
そんな呪いの中でも最強最悪の「呪いの王」と言われていたのが両面宿儺であった。

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『呪術廻戦』2巻より

両面宿儺は強すぎるため、20本の指に分割して封印されていた。

そのうちの一本が虎杖が通う高校に保管されていたのだが、あまりにも時間が経ちすぎて封印が弱まっており、たまたま指を見つけたオカルト研究会の先輩がそれを開けてしまった。

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『呪術廻戦』1巻より

両面宿儺はあまりにも強力であるため、指一本の封印が解けるだけで大量の「呪い」を引き寄せてしまう。

引き寄せられた「呪い」を祓うために、呪術高専と呼ばれる呪術を学ぶ専門学校から派遣された伏黒恵が闘うも、途中虎杖を庇って大ピンチに陥ってしまった。

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『呪術廻戦』1巻より

虎杖は持ち前の馬鹿力で呪いと闘い伏黒を助けようとするものの、「呪いの力」を持たない虎杖の攻撃ではダメージを与えられない。

虎杖に呪力はない。伏黒にも力は残されていない。
絶体絶命のピンチの中で虎杖は

両面宿儺の指を食べて、呪力を得る

道を選んだ。

NARUTOでいうと、自ら九尾の妖狐を取り込むようなものだ。

普通の人間なら死ぬ。

両面宿儺の呪いを取り込んで耐えられるような人間はこれまでいなかった。

しかし虎杖は両面宿儺を取り込み、なおかつ制御できた。
1000年生まれてこなかった逸材だった。


しかしながら、呪いを祓うために活動している呪術界にとって、虎杖は両刃の剣である。

虎杖は両面宿儺を取り込める逸材であると同時に、厄災でもあるからだ。

虎杖が暴走したら、世界に大きな被害が出てしまう。
保守的な呪術界の老人たちは、今すぐ虎杖を殺してしまいたいと思っていた。

虎杖を殺せば、中の両面宿儺も一緒に死ぬからだ。
NARUTOが死んだら九尾の妖狐が一緒に死ぬようなものだ。

虎杖がすぐに死刑を免れる方法は2つしかない。

「今すぐ死ぬか、全ての宿儺を見つけ出し、取り込んでから死ぬか」

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『呪術廻戦』1巻より

作者の芥見下々(あくたみげげ)先生は、

「最終回はどのようにするかはもう決まっている」

とコミックスのおまけページで語っていた。

全ての両面宿儺を取り込んだ後、虎杖がどうなるのかはもう作者の中では決まっているのだろう。


「オマエは強いから人を助けろ」

じいちゃんの遺言が虎杖の頭に響いた。


「宿儺が全部消えれば、呪いに殺される人も少しは減るかな」

虎杖は静かに決意した。

「宿儺は全部喰ってやる。後は知らん」

とにかく人を助ける道を選んだ虎杖は、呪いを祓う呪術を学ぶため、東京都立呪術高等専門学校に転入した。

転入の際、虎杖が吐いたセリフが良い。


「宿儺を喰う それは俺にしかできないんだって」

「死刑から逃げられたとして この使命からも逃げたらさ」

「飯食って 風呂入って 漫画読んで ふと気持ちが途切れた時 あぁ今、宿儺のせいで人が死んでるかもなって凹んで

「俺には関係ねぇ 俺のせいじゃねぇって自分に言い聞かせるのか? そんなのゴメンだね」

「自分が死ぬ時のことは分からんけど 生き様で後悔はしたくない」


虎杖の呪術師としての活動が始まった。

敵と味方のパワーバランスが面白い

『呪術廻戦』は敵キャラが固定されている。
フリーザを倒したらセルが登場し、セルを倒したら魔人ブウが出てくるみたいな、次々と強い敵が現れるタイプの漫画ではない。

「呪いこそが本物の”人間”なのだ」と吹聴し、人間を消し去って「呪いの世の中」を作ろうと企む連中がいる。

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『呪術廻戦』2巻より


しかし呪いの世を作るためには大きな障壁がある。

五条悟。

虎杖が通う呪術高専の先生で、現役最強の呪術師だ。

普通、大魔王バーン的な最強のキャラクターは敵側にいるものだが、『呪術廻戦』の最強のカードは今の所、味方側にある。

最強の呪術師、五条悟はトランプでいうジョーカーのようなもので、出てきたらゲームが終わってしまうような圧倒的な力を持つ。

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『呪術廻戦』52話 五条悟のメドローア

以前、歴代ジャンプキャラクターの強さを比較してみたが、五条悟の実力はハンターハンターのメルエム以上と思われる。

oreno-yuigon.hatenablog.com

五条悟は強すぎて倒せない。
なので倒すのではなく「封印」するために呪いと「呪詛師」が手を組み、知恵を絞り、罠を仕掛けようとしているのだ。

呪いの世の中を作るためには、

  • 最強の呪術師・五条悟を封印し
  • 虎杖悠二の中にいる両面宿儺を味方に引き入れる

必要がある。

そのために敵は色々と作戦を練り、準備をして、罠を仕掛け、コマを一つずつ進めるように計画を進めている。

このような「バトル外での駆け引き」も呪術廻戦の魅力の一つだろう。

キャラクターそれぞれに思惑があり、目的がある。

呪いにも呪術師にも目的がある。

目的を果たすために協力し、お互いに「敵」を倒そうとしているのだ。


2019年12月現在、週刊少年ジャンプで連載されている『呪術廻戦』からは、とんでもないことが起こりそうな“臭い”がする。

呪いが総力を結集して五条悟を封印しようと襲いかかってきているのだ。

このヒリヒリする感覚は、ハンターハンターでゴンが覚醒し、ゴンさんになった時以来だろうか。

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ゴンがゴンさんになる瞬間『ハンターハンター』29巻より

もしも五条悟が破れたら、それは刃牙で範馬勇次郎が負けるようなものだ。
その衝撃は計り知れない。

『呪術廻戦』は今、最高の盛り上がりに到達しつつある。

幸い『呪術廻戦』はまだ7巻までしか出ていない。

まだまだ余裕で追いつけるので、興味がある人は一度読んでみてほしい。

乗るしかない、このビッグウェーブに。

呪術廻戦 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

呪術廻戦 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:芥見下々
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Kindle版

呪術廻戦の設定について(呪力と術式)

呪術師は「呪力」と呼ばれる力を使う。
ハンターハンターでいうオーラのようなものだ。

「呪力量」はその人物や呪いが持つ呪力の総量で、基本的には戦闘能力は呪力量に比例する。
「術式」は呪力を流して使う特殊能力のようなもので、ハンターハンターの「念能力」みたいなものだ。

術式は生まれながら体に刻まれていて、それぞれの登場人物がオリジナルな術式を持っている。
物と物を入れ替えたり、式神を召喚したり、魂に触れたりと色々な術式がある。

念能力者が念能力を駆使して戦うように、呪術師はそれぞれが持つ術式を駆使して戦う。

「領域展開」という『ブリーチ』の「卍解」のような必殺技もあるが、これはもう漫画を読んでほしい。
個人的には五条悟が領域を展開するシーンが『呪術廻戦』の飛躍の瞬間だったと思っている。

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『呪術廻戦』2巻より


こうやって書き連ねてみると、『呪術廻戦』はこれまでのジャンプ漫画の面白要素をふんだんに取り込んでいることがわかる。
ただ面白い要素を取り入れるだけでなく、オリジナルとして昇華しているのが『呪術廻戦』のすごいところだ。

パクっているわけではない。
どこかで見たことがありそうだが、完全にオリジナルだ。

『呪術廻戦』は初めて読む人には少し難しく感じるかもしれない。
設定がかなり凝っているため、一度読むだけでは内容が完全に頭に入ってこない。

シンプルなストーリーで随所に感動ポイントが散りばめられている『鬼滅の刃』に比べ、『呪術廻戦』を語るのは本当に難しかった。

oreno-yuigon.hatenablog.com

それでも、『呪術廻戦』は面白い。
これまでのジャンプの王道漫画を愛してきた人の心にはきっと響くと思っている。

oreno-yuigon.hatenablog.com


最後に『呪術廻戦』の元々のファンの方にお伝えしたいのだが、『呪術廻戦』には幻の0巻がある。
ワンピースのロマンスドーンみたいに別の話になっているわけではなく、0巻がしっかりと今につながっている。

主人公は呪術高専2年の乙骨憂太で、ストーリーも普通に泣けて面白い。
夏油傑も出てきて、本編で「去年の百鬼夜行」と語られているの事件が何なのかがわかるはずだ。

呪術廻戦ファンであれば、おまけとしてではなく、本編と並べて読んでも全く違和感はない。

呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校 (ジャンプコミックス)

呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校 (ジャンプコミックス)

  • 作者:芥見 下々
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: コミック